欧州主要国は中国の勢力拡大を防ぐ対策を用意している。EU執行委員会は先月4日、6年間の交渉の末、昨年12月に妥結した中国との包括的投資協定(CAI)批准を中止すると宣言した。そして、この発表から4日後には8年間中断されていたインドとの自由貿易協定(FTA)を再開すると発表した。EUはこれより前の今年3月、中国によるウイグル族弾圧を理由に、米国・カナダと連携して中国人高官4人を制裁対象に指定した。リトアニアは先月、中国の習近平国家主席が毎年1回、東欧の首脳たちを集める、いわゆる「17+1首脳会議」から脱退すると宣言した。
EUを離脱した英国も中国と鋭く対立している。中国の統制装置である香港国家安全維持法を避け、英国に移住する香港人を幅広く受け入れている。英国で来週開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)にインド・オーストラリア・韓国の首脳をゲストとして招待したのも、中国を念頭に置いた動きだと見方が多い。
中国にとって初の西側諸国における修交国で、欧州で共産主義政権に最も友好的なスウェーデンも最近は中国を遠ざけている。2005年に欧州で初めて中国文化を伝える機関「孔子学院」を開設したスウェーデンだが、昨年、欧州で初めて孔子学院をすべてなくした国になった。孔子学院は中国共産党の宣伝道具だと批判されている。
欧州の反中ムードはしばらく続く可能性が高い。中国との包括的投資協定を主導し、中国と近かったドイツのメルケル首相は9月に退任する。イタリアでも親中傾向が顕著だった左派連立が崩れ、2月に強力なEU統合主義者のマリオ・ドラギ首相が就任し、挙国内閣を組んだ。しかし、欧州における反中の動きも限界があるという見方も出ている。巨大な中国市場を遠ざけることは、欧州にとっても損失になる可能性があるからだ。