さらにKFXには、北朝鮮の核ミサイルの脅威や中・ロ・日など周辺大国の軍事的脅威に対応できる韓国製「毒針兵器」類が搭載される予定だ。国防科学研究所などが既に開発中、もしくは今後開発する韓国製「毒針兵器」としては、超音速巡航ミサイル、極超音速ミサイル、長距離空対地ミサイル、そしてブーストフェイズ要撃ミサイルなどが挙げられる。韓国製超音速巡航ミサイルは、有事の際にKFXなどから発射され、中国の空母や水上艦などを撃沈できる兵器だ。極超音速ミサイルはマッハ5以上の超高速で飛行し、ソウルから平壌上空までわずか1分15秒で到達できる。また国防科学研究所は、北朝鮮の弾道ミサイルを発射直後のブーストフェイズ中にKFXから撃った高速ミサイル(要撃弾)で迎撃する兵器システム開発も進めている。北のミサイルをブーストフェイズで迎撃すれば、ミサイルの破片が韓国の領域に落ちることで生じる被害を予防できることになる。
だが、出庫式を行ったからといって、これらの兵器類をすぐに積むことになるわけではない。今後およそ1年間の地上試験を経て、来年から2026年まで、およそ2000回の飛行試験を行わなければならないからだ。この過程でどんな難関が待ち構えているか、誰にも分からない。また、北朝鮮はもちろん中・ロなど周辺諸国のハッキングの可能性にも備えなければならない。元青瓦台(韓国大統領府)安全保障特別補佐でサイバー専門家の林鍾仁(イム・ジョンイン)高麗大学教授は「KFX開発プログラムにバックドア(不正侵入経路)が仕込んであったら、後で知らぬ間に作動不能事態などに見舞われかねない」とし「KFXのソフトウエアの比重はとても高いのに、ハッキング問題への関心が特になさそうなのが懸念される」と語った。
一部に懸念や慎重論はあるが、過去およそ10年にわたって順調に開発を進め、予定通り出庫式を行うことになったのは十分拍手に値する。今年2月、慶尚南道泗川のKFX試作1号機組み立て現場で会ったKAI関係者らは、予想よりも淡々とした表情で「今からが始まり」と強調した。KFX開発が成功裏に完了し、「毒針兵器」を搭載した韓国型戦略兵器プラットフォームとして位置付けられることを期待する。
ユ・ヨンウォン軍事専門記者