同盟国の韓国が米国の軍事的ライバルであるロシアとABM条約を維持・強化することになったのは、MDを進めようとする米国新政権にとっては不意打ちだった。その上、金大統領は、クリントン政権の対北政策に対して非常に否定的だったブッシュ大統領にこれを受け継ぐよう告げた。米情報当局は、北朝鮮がジュネーブ合意で寧辺のプルトニウム生産施設が凍結された状況でパキスタンとの秘密協定を通じて高濃縮ウラン(HEU)に転換、核兵器開発を持続していることを把握しており、ブッシュ政権は対北朝鮮政策の全面的な見直しを考えていた。首脳会談の結果は最悪の外交惨事だった。
最近の文在寅(ムン・ジェイン)政権の姿は、まさに20年前のデジャビュと言える。20年前のABM条約を巡る米ロ葛藤でロシアの肩を持ったのと同様に、韓国は中国の地域覇権への挑戦に直面した米国の戦略に加わろうとせず、中国に傾倒するかのような立場が見受けられる。米国が推進するインド太平洋戦略にも、クアッド・プラスにも、クリーン・ネットワークにも参加するとの立場を示していない一方で、中国に対してはミサイル防衛もTHAAD(高高度防衛ミサイル)の追加配備も韓米日の軍事協力も行わないという、いわゆる「3不約」を交わしている。ワシントンの朝野では、韓国は中国に傾倒した「影の国家」とする見方が強い。
文在寅大統領は新年の記者会見で「バイデン新政権はトランプ政権で成し遂げた成果を継承・発展させるべきだ」と言いながら、トランプと金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の間で交わされたシンガポール宣言を対話の出発点としなければならないとした。まるで20年前、金大中大統領が、ブッシュ大統領にクリントンの対北政策を受け継ぐよう促したのと同じようなパターンだ。バイデン大統領と外交安保チームは、トランプの北朝鮮政策を非難した。イベント的な出会いとリアリティーショーを通じて、この3年間、非核化の進展どころか北朝鮮の核戦力を強化させる結果だけを招いたと考えている。過去、北朝鮮と交渉した豊富な経験を持つ彼らは、トランプ政権の政策を継承するよう求める文大統領の指摘をどのように捉えているのだろうか。