この大統領の戦略は目論見通り進んでいるようだ。政権の盲目的追従者にとって、K防疫は攻撃してはならない聖域になった。ワクチン確保に際しての政府の安易な対応と、急増する感染者数の推移を現実として伝えるメディアは「K防疫の狂信者」たちから「異端」というレッテルが貼られる。感染対策について批判的な記事を書いた記者が直面する苦しみについては、ここ数日の間に何度も目撃した。険悪でどこか怪しい攻撃の言葉がコメント欄や電子メールを通じて溢れかえり、取材記者の写真や個人情報までもが犯罪レベルの言葉の暴力と共にSNS(会員制交流サイト)上で広まっていく。青瓦台(韓国大統領府)の掲示板にもこのような書き込みは放置されている。「K防疫を無視する×たちは誰か。韓国に住む日本×たちか」などだ。
文大統領を支持することは当然あり得る。しかし事実に基づいた支持と無条件の狂信は異なる。ジュネーブ大学精神科のアンドレ・ハイナル教授は狂信のメカニズムについて「指導者は単純な宣伝のスローガンを繰り返し使う。社会を善悪に二分し、怒りに狙いをつける仮想の悪魔を作り上げる。事実はねじ曲げられる」と説明した。狂信の世界ではスローガンだけで一つになり、憎悪し、攻撃が行われるのだ。