【寄稿】北朝鮮の核問題、バイデンがトランプから学ぶべき三つのこと

 オバマ元大統領はトランプ氏に「北核問題が最も緊急な安全保障懸案になるだろう」と引き継いだという。問題は十分予想できたにもかかわらず、時間をやり過ごしてしまったというのだ。その時間は取り返しがつかず、北朝鮮は核国家になってしまった。オバマ政権は決定的な過ちこそないものの、よくやったと言えるものもない。

 トランプ政権は「大きな過ちがある一方で、よくやったと言えるものもある。最も悪かったのは、韓米同盟を弱体化させたことだ。北核問題に対処する上で最も重要な軸は韓米同盟だ。同盟弱体化の多くの部分は、韓国政府の南北関係への没入に起因するものの、トランプ大統領も同盟を揺さぶることに一役買った。二つ目の過ちは、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を正当化した点だ。2018年の一般教書演説で北朝鮮体制と人権問題を激しく非難しておきながら、シンガポール共同声明後は金委員長を「立派な指導者」と呼んだ。

 功績と呼べることの一つ目は、核交渉で北朝鮮式の「段階的アプローチ」を拒否したことだ。寧辺から非核化を行い、補償を得てこそ経済的余裕が生まれ、核も開発し続けることができるが、首脳間の談判で失敗に終わった。ハノイから汽車に乗って帰る時、金正恩委員長の未来は暗かったはずだ。二つ目は、首脳外交中も制裁を維持し、政権期間中に制裁を追加したことだ。過去、北朝鮮は交渉が始まれば制裁が有名無実化するのを経験していたが、今回は違った。オバマとトランプの両政権の北核問題に対する通知表は、冷静に判断されなければならない。オバマ大統領を受け継ぐというバイデン氏の新チームが功績を上げるという保障はどこにもない。バイデン氏の新チームは、核実験に6度も成功した北朝鮮にイランとの核合意を援用し、段階的かつ多国的アプローチを好む、といった見通しが示されている。核活動を部分的に凍結し、主な制裁を解いたイラン・ディールを適用する場合、北朝鮮はより強力な核国家になる可能性がある。バイデン氏の新チームが「トップダウン」ではなく「ボトムアップ」交渉をするからといって手放しに喜ぶこともできない。北朝鮮には、公開された寧辺以外の重要核施設を交渉テーブルに載せることができる人物は金正恩委員長をおいてほかにいない。交渉担当者は、体制の運命が懸かった第1級の国家機密については口を開くこともできないだろう。多国的アプローチが6カ国協議の復活を意味するなら、北朝鮮に有利な時間を与えるだけだ。

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