独裁国家や全体主義体制は家庭や人倫すら破壊する。偉大な指導者、ソビエトの栄光は絶対的価値であり、不可侵の対象だ。これ犯した親、兄弟姉妹も容赦なく通報と報復の対象となる。「新型コロナ独裁」という言葉が時折聞かれる韓国でもそうしたことが起こっている。2カ月前、釜山のある女子中学生が口論の末、自己隔離命令に違反して家の外に出た母親を警察に通報した。政府の防疫指針に違反した集会を主導したとして「殺人者」呼ばわりされる世の中なのだから、カッとなった10代の女子中学生にとって新型コロナ防疫は母親よりも重い「偉大な指導者」であり、「ソビエトの栄光」だったのかもしれない。
問題は、その新型コロナ防疫の基準が「ネロナムブル(私がすればロマンス、他人がすれば不倫=身内に甘く、身内以外に厳しいこと)」であることが次々と明らかになっている点だ。広場は政治的友軍であるのか、それとも批判勢力であるのかによって開放されたり、閉鎖されたりする。その基準によって開天節(10月3日)にソウル市内の光化門広場は閉ざされ、全国民主労働組合総連盟(民労総)の集会があった同市内の汝矣島公園は開放された。
青瓦台経済首席秘書官は「8・15集会は国内総生産(GDP)を0.5ポイント減少させた」と主張した。消費クーポンをばらまき、「コリア・セール・フェスタ」を開催して人々が集まる活動を奨励した政府の政策の過ちはスルーし、8・15集会を言い訳にして国民を二分し、批判勢力・政敵を悪魔化する。ソウル市防疫管制官だという人物は、一日300人以上も新規感染者が出ている最近の感染再拡大が3カ月前の光復節集会のせいだと言った。根拠と因果関係は提示していない。防疫科学には言及せず、詭弁(きべん)と陰湿な攻撃を吐き出す。防疫ではなく、政治をやっている。
このまま行けば、近いうちに一日の新規感染者が600人、いや1000人になると言われている。防疫でネロナムブルをはばかることなく強行している現政権は、また何をやらかすか分からない。防疫が全体主義まがいの恐ろしい世の中を作りつつあるのではないかどうか、しっかりと警戒していかなければならない。
チョ・ジュンシク副社長兼社会部長