反日感情の縦糸と従北情緒の横糸が韓国民族主義を歪曲(わいきょく)している。北朝鮮が日本植民地時代の残滓をなくし、民族史的正統性でリードしたという偽りの歴史観が民族主義を汚染している。感傷的な民族主義は、厳しい国際政治に対する冷徹な認識を妨げる。21世紀の新冷戦時代を迎え、朝鮮半島は米中の帝国覇権競争の最前線となっている。民主主義と市場経済を共有した韓日間の相互協力は、「帝国中国」の無限なる膨張から韓国の主権を守る合従連衡の国家戦略資源だ。即物的な反日感情を超え、冷静な克日と用日が新たな韓国民族主義のキーワードにならなければならない。
北朝鮮は、われわれが思っている韓民族ではない。自ら「金日成(キム・イルソン)民族」を宣布して久しい。世界5大核保有国である国連安保理常任理事国に次ぐ核戦略国であることを実証した北朝鮮の軍事崛起(くっき)により、南北体制の競争は全く新しい局面へと突入した。朝鮮半島の戦略構図の重大な変換期に直面しても、空虚な終戦宣言に執着する文政権の従北民族主義は、国を害する妄想だ。停戦協定と韓米同盟に基づいた停戦体制は、朝鮮半島の「事実的・法的平和」を70年近く支えてきた。冷酷な国際政治の現実と力の力学に背を向けるとき、南北が共存する朝鮮半島2国体制の樹立は不可能となる。韓国戦争(朝鮮戦争)は、情熱的民族主義が平和どころか戦争をもたらすといった教訓を与えている。
反日・従北民族主義は、国と市民的自由を脅かす。反日民族主義は時代錯誤的であり、従北民族主義は歴史の反動だ。しかし、民族主義がつくり上げた「国民国家」は人類の厳然たる現実であるため、開かれた民族主義を育て上げる以外には代案がない。血統と習慣に縛られた種族的反日・従北民族感情は、歴史の退行にすぎない。種族的限界を振り切る市民的民族主義であってこそ、韓国民族主義が復活するのだ。反日・従北を超えて克日・克北に向かうとき、道が開かれる。光復75周年に実体もつかめない親日派という言葉を持ち出すのは、自由と正義の共和制の敵にすぎないのだ。
ユン・ピョンジュン教授