■防疫の場面が生体実験に化ける
子どもに生体実験を行う場面と紹介されている写真2は、実際の731部隊と推定される。中国の吉林省で2003年に出版された『「七三一部隊」罪行鉄証-特移扱・防疫文書編集』に載っている。1940年、当時満州国の首都だった新京や、農安でペストが流行した。関東軍は731部隊を派遣して防疫活動を展開した。ところが、ペストの流行は731部隊が実施した細菌散布のせいだったという事実が後になって判明した。2011年、731部隊の隊員だった金子順一の博士学位論文が発見されたことで分かった。金子は、731部隊が1940年6月4日から同19日にかけて、ペストに感染したノミを飛行機でこの地域(原文ママ)に散布したと記述した。この写真は、731部隊の蛮行を示す証拠とは言えるが、子どもに対してペスト菌の生体実験を行う場面だと説明してはいけないという。
731部隊が数千人の中国人・朝鮮人に生体実験を行い、細菌戦を展開した事実は、隊員が残した証言や記録などで確認された。だが資料の出典や信ぴょう性を細かく問わず反日攻勢に出るのでは、反撃に遭う恐れが大きい。チェ教授は「民族主義的感受性を刺激するのに必死なあまり、誤った写真を用いるケースは1例や2例にとどまらない」と批判した。
金基哲(キム・ギチョル)学術専門記者