しかしオーストラリアだけで中国の脅威に立ち向かっているわけではない。オーストラリアは米国はもちろん、日本やインドなどとの協力も強化している。これら4カ国は米国が中国に対抗して構築した戦略多国間安保協議体「クアッド」に加わっている。クアッドは随時、合同海上訓練など中国を念頭に軍事演習を行っている。オーストラリアはいわゆる「ファイブ・アイズ」の一員でもある。ファイブ・アイズとは米国、英国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダの5カ国による機密情報共有の枠組みを意味する。映画にも登場するオーストラリア内陸で米国と共同運用する軍事施設「ファイン・ギャップ」は、南シナ海と東シナ海における中国軍の動向などを監視している。
このようなオーストラリアの戦略は、米中両大国の覇権争いに挟まれた韓国にも多くの点を示唆している。過去に自らの姿を現すことなく時を待ち、実力を高めてきた「韜光養晦(とうこうようかい)」と呼ばれる外交・安全保障戦略の方針を進めてきた中国は、今や露骨に「戦狼外交」を展開している。戦狼外交とは中国の人気映画「戦狼(せんろう)」に例えた言葉で、オオカミのように力を誇示する中国の外交戦略を意味する言葉だ。
米国は米国なりに同盟国を引き入れ、中国に対する連合戦線の構築に力を入れている。米国はクアッドに韓国などアジアの主要国を参加させる「クアッド・プラス」構想も推進している。
これによって米国の対中連合戦線への参加圧力も強まっている。マーシャル・ビリングスリー米国軍備管理担当大統領特使は先月28日、韓国メディアとの記者会見で「韓国も中国が『核で武装したやくざ』として浮上している現状を放置できない点をよく理解している」と述べた。中国に対して公開の席で「核やくざ」と呼んだのだ。
来月には米国務省のポンペオ長官に続き、中国の王毅・国務委員兼外相が来韓する見通しだ。米中はどちらも過去において韓国のいわゆる「模糊(もこ)性戦略」をあえて見過ごすこともあった。しかし今や米中はどちらも韓国に対し「だからあなたはどちらの側に立つのか」と問い詰めてきている。二つの強大国から二者択一を強く迫られる時が近づいているのだ。オーストラリアの生存戦略と姿勢が一層身に染みる時だ。
ユ・ヨンウォン軍事専門記者