安倍の対米偏重外交はそうした事態に対する安倍流の解決策だった。外交の逆説はそうした偏重外交が中国との関係をむしろ安定させたことだ。日本が中国に対する幻想から覚めると、中国も日本を米国の垣根から引っ張り出そうと期待しないようになり、相互の利益を得ようとする実務外交に転換した。安倍時代の幕が下りると、財界は「対米外交の成功が経済の後ろ盾になった」と言い、相対する労働界も「一定の成果があった」と評した。安倍政治は見かけよりも簡単な政治ではなかったことを示している。
安倍は閣議で発言を控えていたという。相反する立場による活発な討論を促した後、最終的に成功可能性が高い政策に賛成した。安倍時代は「成功した機会主義の時代」と言ってよい。民生を安定させられないままで扇動的な政治スローガンに頼ることや、外交の礎が揺らぐ中で安全保障の強化を期待することが愚かだという事実を気づかせるものであれば、そうした機会主義を一度振り返ってみても損はないだろう。
姜天錫(カン・チョンソク)論説顧問