金「韓日知識人声明に呼応して菅直人首相が出した談話は、以前とはどのような点が違っていたか」
和田「併合そのものに対する問題提起が出たという点だ。菅直人首相は、閣議をへて2010年8月10日に談話を発表した。『当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられました。(中略)この植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明いたします』と語った。われわれが発表した知識人声明に最も近い談話だった」
金「菅直人談話は知識人声明が生んだ成果で、韓国大法院(最高裁に相当)の徴用判決につながるという点で『大河がついに道を開いた』(李陸史〈イ・ユクサ〉の詩『広野』)と思う。今、日本の首相官邸のホームページからこの談話は削除されているという。韓国でも菅直人談話を重視しない雰囲気だ」
和田「韓国の憲法裁判所は2011年、慰安婦訴訟解決に積極的に乗り出さない韓国政府の不作為は違憲と判決し、12年と18年には大法院が日本企業の強制動員に対し賠償判決を下した。知識人声明と菅直人談話がここに影響を及ぼしたと思うか」
金「そういう意見が出ている。09年、韓国の高裁は強制動員被害の控訴審で日本の最高裁の原告敗訴判決(07年)をそのまま受け入れた。韓国の裁判所は、強制動員に対する日本の賠償責任認定に消極的だった。知識人声明で併合条約そのものが違法・無効だという事実が強調され、植民統治の性格に対する認識が変わったことで、憲法裁と大法院の判決が変わったのではないかと思う。このため、知識人声明が韓日関係を悪化させたという恨みの声も聞く」
和田「日本の保守団体からは、私を名指ししつつ、知識人声明が日韓関係を悪化させた主犯だという厳しい表現が出て久しい。だが誰かがどうしてもやらなければならないことだった」