もちろん平凡な人々の小さな幸せを守ることは市政の主な責務と言える。しかし、都市、特に大都市は競争を通じた革新空間として文明の窓口であるとともに国富の源泉でもある。今日の東京だけではなく、ロンドンやニューヨーク、パリなど世界有数の都市が一斉に都市空間革命に力を入れているのもこのためだ。従って、ソウルの都市再生は今からでも長期的でマクロ的な「都市大改造」に向かって拍車を掛けるべきだ。
さらにはわれわれの時代の最先端の建築工法と人文社会学の結合は、物理的開発と生活の質の向上を共存させる可能性を一層高めている。先進国が都市再生を行ったケースとしては、車と歩行、建物と緑地、伝統と未来、人間と技術、土俗景観と人工景観が対峙(たいじ)するのではなく、共に調和を成すことができるといった事実を物語っている。何よりも都市に活気があふれ、都心に人々が再び集結する。あるいは今のソウルは、海外の世界都市が懸命に取り組んでいる課題をいとも簡単に捨て去ってしまっているのではないか、という気がしてならない。
チョン・サンイン・ソウル大学環境学部大学院教授(社会学)