■緊急出動のサイレンに「うるさい」とどなる
消防隊員の力を奪うものはまだある。サイレンを鳴らして走ると「サイレンがうるさい」「本当に患者を乗せているのか」と抗議する人が少なくない。とりわけ夜にサイレンを鳴らし、警告灯をつけていくと「うちの子が目を覚ました」「静かに患者を運んでいけ」と言われることもある。今年4月には、光州で「ここは住宅街です。緊急車両のサイレン(警笛)の騒音を少しばかり減らしてください」という垂れ幕が掲げられたこともある。
消火や救助の過程でドアや、そのほかの財産を破損したという理由で、損害賠償請求に苦しむこともある。ソウル消防災難本部によると、2015年から今年6月末までの間に「消火などで生じた器物破損を弁償すべき」という要求は54件あった。今年5月、ソウル・江東消防署に「ガールフレンドが連絡してこない」という通報が入った。千戸洞の住宅街に到着し、ドアをたたいても全く反応がなかったため、消防官は窓を破った。煙が充満していた。そのときようやくドアが開き、20代の女性が出てきた。火災の危険性があったため、着火炭が置かれていたオンドルの床を切り取った。すると女性は「どうしてオンドルの床を切るのか、弁償しろ。でないと陳情を出す」と抗議した。消防官は「説得して、どうにか陳情は防いだが、『溺れた人を助けて荷物を差し出す』よりもひどいのではないか」と語った。