【コラム】韓国が先進国入りを果たすための最終電車

 これは、2010年に国家的不渡りの絶壁で救済金融を申請したギリシャと似ている。出勤する人ごみの中に若者の姿はほとんど見られない。勤労者4人のうち1人が公務員で、大多数の会社は倒産してしまったためだ。造船大国とまで言われた同国に、製造業が占める割合は5.7%だ。緊縮財政と年金削減に反対する労組のデモ隊が、毎日のように町中を練り歩いている。

 不幸の種は、1980年代から90年代にかけ、実に3回(延べ13年間)にわたって首相を務めたパパンドレウ時代に植え付けられた。ハーバード大学経済学部で教壇を取った経験のあるパパンドレウ氏は、公務員の大幅増員、医療保険の適用拡大、年金の引き上げ、底所得層の子どもの海外留学支援など、破格的福祉時代を築き上げた。没落はこの時から始まった。ギリシャの国民の実に48%は、今もパパンドレウ氏を「歴史上、最も立派な首相」という。ベネズエラの親政府デモ隊は、相変わらずチャベス元大統領の写真を手に行進する。中毒とは、こうも恐ろしいものなのだ。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権の来年度予算は、まるで「福祉時代」「労働時代」の幕開け宣言文であるかのようだ。この宣言文に「後発国家の利点」を受け継ぐ知恵が盛り込まれているのか。文在寅時代は、韓国が先進国の仲間入りを果たす最終電車の時間帯と重なる。終電を逃せば一貫の終わりだ。500万人の失業者と「欧州の病人」という不名誉を背負い、国の運命を開拓しなければならなかったシュレーダー元首相の自叙伝が出刊された。「ドイツ経済再生改革10カ条」に盛り込まれた労働の柔軟性確保と医療保険、年金改革をめぐり、悶々とした夜を過ごしたシュレーダー元首相と、せめて書籍を通じてだけでも話し合ってみることをお薦めしたい。

姜天錫(カン・チョンソク)論説顧問
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