今後の韓半島の核問題も同様の本質を抱えている。金正恩委員長が核を絶対に放棄するはずがないため、北東アジアの核軍備競争も避けられないだろう。それが大きな流れだ。国連安保理は決議案・議長声明・言論声明という3つのうちどれを選ぶかで「魂のない」押し問答を繰り返すだろう。中国・ロシアは致命的な対北朝鮮制裁がない場合だけ国際協調に参加すると思われる。トランプ米大統領が金正恩委員長に対して「尊敬する」と「激怒している」の間を行ったり来たりしているうちに、ロシア介入疑惑やオバマケア代替案撤回のような国内問題に足を引っ張られる危険性が高い。
極東軍備競争のクライマックスは、日本の核武装の可能性に至る。北朝鮮が小型核弾頭とICBMを完成させて弾頭保有量を増やせば、在韓米軍は戦術核を持ち込み、日本の核も議論のテーブルに載せられるかもしれない。中国が神経質になるだろうが、北朝鮮の核を引き止められなかった責任に縛られるだろう。米国も中国も平壌斬首作戦を実行に移す可能性は低い。中国は今年3月、米海軍特殊部隊「ネイビーシールズ」のウサマ・ビン・ラディン暗殺作戦をそのまま再現した特殊部隊訓練を公開したが、平壌を念頭に置いたものではない。
米国も韓国も金正恩委員長に「拒否できない提案」を出すのに失敗した時、本当のシナリオが始まる。拒否できない提案とは、北朝鮮がミサイルをもう1回発射したら韓国が核戦略司令部創設のための立法発議に入り、北朝鮮が「核凍結-廃棄」の手順を約束すれば毎年10億ドル(約1100億円)を供与するという程度の最後通告だ。可能性はゼロに近い。
片足を断崖絶壁の向こう側に突き出すくらいの状況になった時、米朝は電撃的にニューヨークで交渉を開始するかもしれない。北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務省米州局長と米国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表という局長級接触があった後、高官級の接触に移っていくだろう。北朝鮮が強者側に立った「ビッグ・ディール」だ。あの思い出したくもない、24年前のジュネーブの光景が脳裏をよぎる。韓国はまた背景説明を聞く側の国になるだろう。トランプ大統領と金正恩委員長は文在寅(ムン・ジェイン)政権を「わざと」無視するはずだ。ビッグ・ディールが「人質交渉」のように行われる時、交渉テーブルの見物もできない韓国政府は身銭を切るかもしれない。 20年前の咸鏡道軽水炉建設と韓半島エネルギー開発機構(KEDO)支援の時もそうだった。