あらゆる難癖をつけて「漢江の奇跡」を握りつぶす人ほど、逆説的に韓国を先進国扱いする。分配政策を押し通すには、分け合うパイの大きさを誇張するしかないからだ。昨年の韓国の最低時給は比較可能な経済協力開発機構(OECD)加盟32カ国中14位と中上位圏だった。こういう時、「OECD主要先進国よりも低い」と責め立てる。韓国の地位を先進7カ国(G7)並みに格上げさせようというのだ。もちろん、低くて当たり前だ。韓国は「主要先進国」ではないからだ。それを知っていながら、世間をだましている。
圧巻は「脱原発」だ。韓国は製造業が中心の国だ。国内総生産(GDP)では製造業生産が29%を占める。世界銀行の集計で世界ランキング2位になっている。脱原発を宣言したものの、製造業の崩壊に耐え切れず、原発を再稼働させた日本は21%程度だ。脱原発をするには、まず産業構造をどのように変えるのかを青写真で示さなければならない。この政権は、北海油田をほしいままにして国民に牧歌的生活を送らせている北欧と韓国が同じだと思っているようだ。それとも文在寅(ムン・ジェイン)大統領がうらやむヒマラヤの敬虔(けいけん)で汚染されていない国ブータンを目指しているのかもしれない。だが、韓国はそもそもそういう国ではない。電気を大量消費しなければ稼働不可能な半導体・鉄鋼・ディスプレイ・化学・エネルギーなど製造業の工場が国民を食べさせている。今、政府が福祉を充実させるとして増税を求めている「超大手企業」もほとんどがこうした製造業に属する。これが韓国の現実なのだ。