【コラム】金正恩の善意を信じる韓国の楽観的太陽政策論者たち

 太陽政策の純真な楽観論は、これで終わりではない。金大中・盧武鉉政権では、北朝鮮のミサイル攻撃に対する備えは一貫して消極的だった。1990年代初めの「ノドン1号」以降、北朝鮮は絶えずミサイルの性能を改善してきた。金大中政権時代も核開発は続き、テポドン1号ミサイルが日本近海まで飛んでいった。にもかかわらず、米国のミサイル防衛(MD)編入問題を理由に、防衛網の構築をためらった。韓国型防衛システム(KMD)を作ると、口先ばかりだった。

 盧武鉉政権になって、パトリオットPAC2と艦対空のSM2ミサイルを導入した。しかし下層での防御能力を備えただけで、それですら迎撃成功率は低かった。2006年に北朝鮮は核実験に乗り出し、核開発を公にした。それでも盧武鉉政権は、実効性が低いパトリオットで5年過ごした。

 保守派の政権に変わった後も、大きく踏み出すことはなかった。李明博(イ・ミョンバク)政権は、先制攻撃の概念を含む「キルチェーン」構想を作り出した。しかし予算は少なく、政策意思も弱く、推進速度は遅かった。李大統領は、安全保障でも「どれだけ費用を抑えられるか」にこだわった。朴槿恵(パク・クンへ)大統領は軍を優遇したが、意思疎通が足りなかった。軍首脳部ですら、大統領とあまり会えなかった。李明博・朴槿恵両大統領いずれも、問題意識はあったが、軍の統帥権者としての哲学が十分ではなかった。切迫感にも欠けていた。

 半月ほど前、イスラエルが4段階からなる迎撃網を完成させたという発表があった。敵のミサイル攻撃を四つの手段で迎撃し、鉄壁の防御を張り巡らすシステムだ。イスラエルの国防費は、韓国の半分にもならない。韓国は、2倍以上のカネを使ってもこのありさまだ。イスラエルは備え、韓国は備えなかった。イスラエルは切迫感を持ち、韓国は切迫してもそうしなかった。その差が、安全保障上の脅威として返ってきて、韓国の首を絞めている。

朴正薫(パク・チョンフン)論説委員
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