禹氏とチン氏は、被疑者としてのうその供述や、法廷でのうその証言によって、今後苦境に陥ることだろう。両氏の頭の中に、刑事訴訟法くらい丸ごと入っていることだろう。そんな両氏が巧妙に、かつぬけぬけと、うその証言をする様子を見て、一般国民は何を感じ、何を学ぶだろうか。「正直は最大の戦略である」という西洋の格言も、韓国では愚か者が信じる言葉になってしまう。法律に精通し、その知識を悪用するやからがいるからだ。
憲法第27条は「刑事被告人は有罪判決が確定するまで、無罪と推定される」と規定している。元検事と現職検事が起こした騒動の中で、憲法の「推定無罪の原則」は検事たちが享受する権利だという事実を思い知らされた。普通の人々は、検察庁の玄関を入った瞬間に有罪と推定されてしまう。そうでなくても、不正の疑いが持たれていた検事が3カ月以上も検察庁の庁舎を闊歩(かっぽ)し、禹氏に至っては今も韓国政府の全ての人事権を掌握している。「特殊な検事」たちが勝ち馬に乗り出世する様子を見ながら、「普通の検事」たちは挫折感や無力感をこらえるばかりだ。
ここに一つの謎がある。大統領府の民政担当首席秘書官とは、大統領の目であり耳だ。国民の思いを正直に大統領に伝えるのが主な任務だ。しかし禹氏は、国民の0.0001%にすぎない特殊なグループに属する。「現行法では」と言いながら、株取引に失敗した検事の資産をそのまま公開したという本人の発言からも、その異常な感覚が見て取れる。実際にはその発言もそのまま信じるのは困難だ。そんな禹氏を大統領の目、耳となる適任者として、一体誰が推薦したのだろうか。本人の足で大統領の視野の中に入り込むことはできない。そのようなルートはふさぐ必要がある。そうしてこそ、今回のような事態の再発を防ぐことができるのだ。