最近、メディアをにぎわせている「元検事」と「現職検事」と発言や行動を見ると、なおさらそのような考えが浮かぶ。元検事である大統領府の禹柄宇(ウ・ビョンウ)民政担当首席秘書官と、現在拘置所に収監されている大検察庁(日本の最高検察庁に相当)のチン・ギョンジュン検事には共通点が多い。20歳そこそこで司法試験や公務員試験に合格し、スピード昇進を果たして、同僚たちがうらやむ地位に就いたところも似ている。頭脳も明晰(めいせき)だという。さらにもう一つ共通点がある。禹柄宇氏は首席秘書官に昇任する前の2014年、公職者の資産登録で423億ウォン(現在のレートで約39億5000万円、以下同じ)を申告し、行政府の幹部の中で1位となった。一方、チン・ギョンジュン氏は今年3月の資産登録で156億ウォン(約14億6000万円)を申告し、検察と裁判所を合わせた法曹界全体で1位となった。
ここまでは特に文句を付けることではない。問題は両氏が、オンラインゲーム大手ネクソンをめぐる収賄事件と不動産の不正取引疑惑の渦中にあるということだ。話を二転三転させることにかけて、両氏は並外れた能力を持っていた。簡潔に言おう。チン氏はあまりにもぬけぬけと主張を変え続けた。
禹氏はさらに上手(うわて)だった。「…と妻の実家から聞いた」という論法を駆使した。本人はその場にいなかったというニュアンスを感じさせる間接話法だ。取引した不動産の価格は1300億ウォン(約121億円)台で、23.2%が禹氏の妻の名義だという。本人のほかに、その話を信じた人は誰もいなかった。翌日、契約書に押印した部屋に、禹氏が義母と一緒にいたという事実が判明した。すると禹氏は「主に義母を慰めていただけだ」と主張した。「主に」義母を慰めていたのなら、「ほかの時間」には何をしていたというのか。自分の口で「契約書は読まなかった」と言えば、後々厄介な問題が生じかねない。そこで、そのような話を省略し、聞く側がそのように受け止めるよう誘導したというわけだ。見え透いたうそではなく、巧妙なうそをつけば、それだけ人々は信じてしまう。