野党・新政治民主連合の文在寅(ムン・ジェイン)代表も朴大統領に対し「ひとごとのようにコメントできるような問題ではない」とした上で、朴槿恵政権の正統性と道徳性を問題視した。しかし文氏が「ひとごと」とコメントするのも非常に引っ掛かる。文氏は2012年の大統領選挙では野党候補として選挙戦に臨んだが、その当時「われわれは(盧武鉉〈ノ・ムヒョン〉大統領が当選した)02年の大統領選挙の際、『希望の豚貯金箱』の配布により過去のどの選挙よりも清潔に選挙戦を戦った」「どの政権よりも道徳性に優れた政府だった」などと発言している。盧武鉉元大統領も大統領選挙直後、この「豚貯金箱」について「私は国民から受け取った寄付で選挙を戦った。一切の疑惑のない候補者だ」と語っていた。ところが選挙後、盧武鉉陣営の責任者だったある人物は「豚貯金箱で得た選挙資金は4億5000万ウォン(現在のレートで約5000万円、以下同じ)しかなかった」と暴露した。その後04年に検察の捜査で明らかになった盧武鉉陣営の選挙資金は113億ウォン(約12億円)に上っており、また盧武鉉元大統領が生活していた大統領府にも不正な資金が流れ込んでいたことも明らかになっている。
朴大統領の陣営は2012年の大統領選挙で479億ウォン(約52億5000万円)、文在寅候補陣営は485億ウォン(約53億1500万円)を使ったとすでに選挙管理委員会に報告している。しかし政界関係者はこの数字が正しいとは誰も考えていない。あれほど巨大な組織と数多くの人間が選挙に勝つため全国各地を飛び回り、そこで食事し、大々的に広告や宣伝を行っていたのは動かぬ事実だが、両陣営のボス、つまり大統領やその候補者たちは、それらの資金がいったいどこから出たと考えているのだろうか。