進歩(革新)系与党「共に民主党」が、内乱専担裁判部を二審から導入し、裁判部の推薦権限を司法府に与える方向へと法案を変えることにした。既存の法案は専担裁判部を一審から設置し、憲法裁判所長・法相・判事会議が推薦する9人が判事推薦委員会を構成して専担裁判部の判事を推薦することになっていた。この案を巡って、事実上法曹界全体から「違憲」という指摘が出るや、違憲の余地を無くすために推薦委員推薦権を裁判所に持たせるようにしたのだ。
韓国憲法は、軍事裁判を担当する軍事裁判所だけを唯一の特別裁判所と定めている。軍事裁判所ではない内乱専担裁判部のような特別裁判所を法律で設置するのは明白な違憲だ。民主党が新たに打ち出した案の通りに、専担裁判部の構成を裁判所に任せるとしても、それは同じだ。法をどのように変えても、軍事裁判所ではない別の専担裁判部そのものが違憲だからだ。根本的に、特定の事件だけの裁判のために既存の司法府ではない別途の裁判部を設置すること自体が、法治国家ではあり得ない。
これは、憲法が定める司法府の独立を侵害するものであり、かつ、国民誰もが公正な裁判を受ける権利を侵害するものだ。専担裁判部の設置は特定の被告人について異なる法律を適用することであり、事実上、有罪宣告を予断するものだ。いくら大罪を犯したとしても、民主法治国はこの大原則から逸脱してはならない。
立場を変えて、もし李在明(イ・ジェミョン)大統領の裁判5件を別途にまとめて裁判する専担裁判部をつくり、保守系の裁判官で推薦委を構成し、判事を推薦することにしたら、民主党は納得できるだろうか。すぐに違憲訴訟からやるだろう。
民主党がこうして執拗(しつよう)にこの法案を推進しようとするのは、実際にこの法を実行したいからではないだろう。判事たちに「戒厳は内乱だった」と判決しないのなら内乱裁判部を設置する、と脅すためだ。もし一審で「戒厳は内乱」だと判決が出れば、内乱裁判部を実行せずにいるだろう。だが、戒厳に対して重い刑が宣告されても「内乱ではない」という判決が出たら、そのときは実際に内乱裁判部を強行することもあり得る。彼らがこうするのは、「内乱」であればこそ来年6月の地方選挙で有利になるとみているからだ。