■韓国もバイオ・ビッグ・データ構築中
専門家は「韓国人のゲノム情報が中国に渡る恐れがある」として国家主権レベルでの懸念を訴えている。大規模なバイオ関連データを持つ国がこれを利用しある国の国民に最も効果のある新薬を開発した場合、その国や医薬品への依存度が高まるからだ。海外に渡ったゲノム情報がサイバー攻撃で流出する可能性も考えられる。実際に米遺伝子検査大手の23アンドミーは2023年にサイバー攻撃を受け、690万人分の遺伝子情報が流出した。これらは主にユダヤ系や中国系顧客の遺伝子情報だったという。
米国と中国はゲノム関連のデータを安全保障と関連付け互いに制裁に乗り出している。今年1月に米国防総省はBGIや子会社のMGIなどを「中国の軍事関連企業」に指定した。ゲノム解析企業が中国人民解放軍を支援しているのがその理由だ。これに対抗して中国は世界最大のゲノム解析企業である米国イルミナの遺伝子解析装置の輸入を禁止した。中国政府は「国の主権、安全保障と発展の利益を保護するため遺伝子シーケンス(列)の中国への輸出を禁止する」と発表した。韓国バイオ協会のイ・スンギュ副会長は「ゲノムは産業や安全保障が絡む産業界の新たな戦場だ」「韓国国民の遺伝子情報は国内で収集し、分析できる仕組みを持つべきだ」と述べた。
韓国は100万人を対象にゲノムなどバイオ・ビッグ・データを構築する「国家統合バイオ・ビッグ・データ構築事業」を昨年から開始した。2032年完了を目標に韓国の医療機関や大学病院などで患者の同意を得て検体を集め、韓国企業と研究機関でゲノム解析を行っている。このように確保したデータをAI(人工知能)を使って新薬の開発、精密医療、疾病予防研究などさまざまな分野で活用する計画だ。国家統合バイオ・ビッグ・データ構築事業の団長を務めるソウル大学のペク・ロンミン教授は「バイオ・ビッグ・データは精密医療やバイオ研究だけでなく韓国の命運を懸けた国家戦略資産だ」と説明した。
パク・チミン記者