「そして大統領選挙候補予備選の過程で発生した党内の対立と反目を解消できず、世論から厳しい目で見られることにもなった。それだけではない。候補の予備選後も非常識なやり方で候補の交代を試みようとしたのをはじめ、候補一本化問題を巡って統合を実現できない状態で大統領選挙に臨んだ。こうした幾つもの要素が複合的に作用し、国民の力は大統領選挙でも敗北することになったのだ」
「政党政治そのものが離合集散を無限に繰り返す構造へと変質し、ブラックホールのように全てのイシュー(論点)を吸い込み、政党の政綱・政策の提示が無意味なものになってしまった。従って、政治発展を成し遂げるためには、政党と政治家間の離合集散の環を断つことが最も重要な課題だと言える」
インタビュー中、沈名誉教授は「今、韓国政治を脅かしているものの一つがまさに比例代表制」と語りました。比例代表制はもともと(1961年、当時の朴正煕〈パク・チョンヒ〉陸軍少将による)5・16クーデター直後、第3共和国が発足する過程で共和党創立勢力が、旧民主党新派・旧派が統合できないように誘導する高度な術策でした。ところが今では、学界・労働界・言論界・市民団体など韓国社会の各界を政治の場へと追い立てる否定的な役割を果たしているのです。
沈名誉教授が同書でもう一つ強く批判しているのは「尹錫悦・前大統領弾劾の過程で憲法裁判所が犯した明白な過ち」です。これは増補5版991ページに記述されています。
「(2025年4月4日の尹錫悦大統領罷免)宣告後、文炯培(ムン・ヒョンベ)=当時の憲法裁判所長権限代行=は、時間が少しかかってでも全員一致をする方がよいという考えで熟考の時間が長かったと言い『少数意見もできる限り多数意見として盛り込むために調整した』と明かした。(原注:文炯培は『裁判官8人の意見が一致しなければ極度の混乱と不安を避けられないだろう』『裁判官同士で意見の差が存在する状態では国民を説得し難いという考え』だったと述べ『万一、何対何で出た場合はと思ったが、その少数意見をもって多数意見を攻撃するから、調整』したと、調整したことを認めた。こうした発言は、法理的判断ではなく政治的および社会的問題に対する考慮から裁判官間の調整を通して満場一致を誘導したという趣旨として解釈し得る)」
「これは、裁判官の間に意見の差があったにもかかわらず全員一致にするため『調整』をしたことを認める発言で、『裁判官は憲法と法律によって良心に従って独立して審判する』という憲法裁判所法第4条に背く内容だと言える。この条項が、外部はもちろん内部的な圧力からも独立的であるべきで、各自が自身の法的信念と良心に従って判断すべきことを明示しているにもかかわらず、全員一致のための調整をしたと判明したからだ」
兪碩在(ユ・ソクチェ)歴史文化専門記者