文在寅(ムン・ジェイン)政権時代にTHAAD(高高度防衛ミサイル)正式配備を遅らせるため、装備・工事資材の搬入情報といった軍事機密をTHAAD反対派の市民団体に知らせた疑いで、検察が鄭義溶(チョン・ウィヨン)元国家安保室長、徐柱錫(ソ・ジュソク)元国家安保室第1次長などを在宅起訴した。特に徐・元次長は、計8回にわたって、関連情報を市民団体に教えるよう職員に指示したという。この市民団体の中には祖国統一汎(はん)民族連合(汎民連)南側本部など、大法院(最高裁に相当)が利敵団体と認めた組織も三つ含まれていた。汎民連は北朝鮮主導の吸収統一を「自主統一」だと主張してきた団体だ。こうした親北団体に2級軍事機密を渡したのだから、安全保障の「自害行為」も同然だ。
THAADは、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対応するため、朴槿恵(パク・クンヘ)政権時代に在韓米軍への配備が決まった。ところが中国が反発し、THAAD反対の各市民団体は「THAADのレーダーの電磁波は人体に有害」と称し、慶尚北道星州のTHAAD基地前でデモ・座り込みを繰り広げた。韓米両軍当局は2020年、衝突を避けようと、秘密裏に装備の輸送作戦を立てた。ところが徐・元次長などがこの情報をTHAAD反対派団体にあらかじめ教えてやり、デモ隊が車両を動員して搬入路を遮断するなど、作戦を妨害した―というのが検察の捜査結果だ。文政権の安全保障の責任者が、事実上、激しい反対デモを助長していたのだ。
文政権は「THAADの追加配備/米国のミサイル防衛システムへの参加/韓米日軍事同盟を行わず、THAADの運営に制限を設ける」ことを中国に事実上約束した状態だった。中国の反発を受けて、事実上、軍事主権を放棄したのだ。その状況でTHAAD反対派の団体を活用し、THAADの配備を遅らせようとしたとみるほかない。
文政権は、THAADの電磁波を数十回も測定して人体に無害であることを確認しても、情報を公開しなかった。THAAD反対扇動の力がそがれることを恐れたのだ。こうした形でTHAADの正式配備は、文政権の5年間、先延ばしにされ続けた。中国の顔色をうかがって自分たちの防御兵器を自ら無力化したのだ。THAADは尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権発足後、ようやくきちんと配備された。このとんでもない事件の真実を法廷で明らかにして、しかるべき処罰をしなければならない。