大統領権限代行が大統領指名分の憲法裁判官候補者を指名するのは、今回が初めてだ。2017年に、当時の黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行は、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領弾劾が認容された後、李善愛(イ・ソンエ)憲法裁判官を任命した。ただし李裁判官は、大統領ではなく当時の梁承泰(ヤン・スンテ)大法院長(最高裁長官に相当)が指名した候補者だった。韓代行が後任を指名したことに伴って、国会は人事聴聞会法に基づき、20日以内に審査を終えなければならない。国会が拒否したら、大統領(代行)は10日以内に期日を定めて聴聞経過報告書の再送付を要請した後、後任の裁判官を任命できる。
進歩系最大野党「共に民主党」はこの日、韓代行の裁判官指名を批判したが、保守系与党「国民の力」は歓迎のメッセージを出した。国民の力の権性東(クォン・ソンドン)院内代表は「韓代行が2裁判官を指名したのは勇断」とコメントした。与党側では、韓代行が大統領指名分の裁判官を任命しなかったら、立法・行政はもちろん司法領域まで民主党寄りに傾くだろう-と懸念する雰囲気だった。
国民の力の一部では、この日、韓代行が民主党の反対の中で憲法裁判官の指名を断行したことを契機として「韓悳洙大統領候補説」が浮上する雰囲気も現れた。尹相炫(ユン・サンヒョン)議員は、政府ソウル庁舎で韓代行と会った後、「韓代行の大統領選出馬を主張する方は多く、私に『尋ねてみてほしい』という人が多いのも事実」だとしつつ「地域的なことや安定感、豊富な国政経験であるとか、さまざまな面で良いカード」と語った。朴洙瑩(パク・スヨン)議員も「今回の選挙で最大の話題は経済」「韓代行は通商交渉本部長や駐米大使などを歴任した専門家」と発言した。ただし韓代行自身は、首相室の幹部に「大統領選挙の『だ』の字も持ち出すな」と述べ、大統領選挙出馬を巡る問題に言及してはならないという趣旨の発言を行ったという。なお、韓国政府内外では、韓代行が平素、国政に対する「責任感」を強調していたことから、米国との通商戦争などに対応するため大統領選挙に出るべき状況が来ることもあり得る、という声が出ている。
梁昇植(ヤン・スンシク)記者、イ・セヨン記者