慶尚北道の山火事は4万5157ヘクタールを焼失し、6日後に鎮火した。韓国では過去最大規模の山火事だった。数十人が死亡し、数万人の被災者が発生した。 毎年大規模な山火事が繰り返され、太白山脈周辺や東海岸地域が大きな被害を受けている。韓国では被害面積100ヘクタール以上、延焼時間24時間以上の場合、大規模山火事に分類する。大規模山火事は2017年以降、2024年を除き毎年発生している。大規模山火事は森を灰にするのみならず、山の生態系を焦土化する。アリが戻ってくるだけでも14年かかる。山林の形を整えるまでは30年、生態的が安定するまでには最長で100年以上かかる。
大型山火事が頻繁に起きるのには理由がある。山林が鬱蒼(うっそう)とすれば木の体積が大きくなり、落ち葉が厚く積もる。燃えやすい「山火事の燃料」が多くなるのだ。気候変化で森の構造が変わることも影響を与える。山林の下層部には笹、ツツジなどの低木が、上層部はアベマキや松などがびっしりと育つ多層構造に変わっている。そのため、ヘリから水を投下しても地表まで届かず、消火が難しくなっている。
気候変動による気温上昇で、春に落葉層が乾燥することも深刻な影響を及ぼす。湿度が40%以下に下がれば、落ち葉に含まれる水分は10%前後まで低下する。水分が15%以下の落ち葉は、35%の落ち葉に比べて発火率が25倍も高い。地表に80センチ以上の高さで落ち葉が積もっているところに火がつくと、地表面の深いところまで火が広がるため、消火が難しい。
発生した山火事に3月末から4月初めまで太白山脈を中心に発生する突風である「襄杆之風」が重なると、規模が拡大する。秒速6メートルの風が吹くと、無風の場合に比べて26倍も速く拡散するが、襄杆之風は秒速20メートルをはるかに超える。2019年に起きた高城・束草の山火事では最大瞬間風速35.6メートルの強風が吹き、毎時5.1キロの速度で山火事が拡散した。今回の慶尚北道の山火事では、それより速い毎時8.2キロの速度で炎が広がった。これに傾斜も影響を与えた。30度の急傾斜地では平地より3倍速く燃え広がる。
大規模な山火事はこれまで江原道で多く発生したが、全国で最も大規模な山火事のリスクが高いのは実は慶尚北道の北部だ。2021年に山林科学院は市・郡・区別にどれだけ多くの「山火事燃料」が存在しているかを評価し、全国の山火事燃料地図を発行した。山火事燃料は落ち葉と低木など地上に積もった引火物質を指す地表燃料と1.8メートルに位置する葉と木の枝などを指す樹冠燃料に大別される。落ち葉の厚さが1メートルに達するところでは、その重さだけ1ヘクタール当たり300~400トンに達する。地図によると、慶尚北道北部の安東市、盈徳郡、英陽郡、義城郡、青松郡などは、ほぼ全ての山林地域が管理優先地域に分類された。山火事予防のために至急樹木を除去し、密度を管理すべき地域だ。今後も慶尚北道北部で大規模な山火事が発生する可能性が非常に高いことを示している。