仁川マンション地下駐車場EV火災と務安空港事故の共通点【コラム】

 昨年8月、仁川市内のマンション地下駐車場で発生した「ベンツ電気自動車(EV)火災」は原因不明のままで終わった。メルセデス・ベンツの電気自動車から発火する様子が写っている動画が韓国中に拡散されたが、捜査当局はベンツ関係者を1人も起訴できなかった。その代わり、マンション管理所長や消防安全管理責任者などだけを立件して責任を問うた。韓国国立科学捜査研究院も「陽極と陰極がショートする絶縁破壊の可能性」などのみに言及しただけで、科学的因果関係は明らかにできなかった。たった1件の火災で約800人の被害者が発生したが、加害者はいない事件になったのだ。

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 当局は「捜査と調査は公正かつ客観的に行われた」と述べた。事実、そうだったはずだ。問題は、電気自動車のような製造物の場合、この公正と客観の「とばり」の裏で、やりと盾を持つメーカーと捜査・調査当局の激しい技術合戦が繰り広げられているという事実だ。例えば、電気自動車火災の場合、BMS(バッテリー・マネジメント・システム)とテレマティクス(車両データ無線通信装置)を通じて保存された情報をどれだけ確保・分析したかなどが重要だ。また、火災の可能性を探るための再現実験なども、どんな情報を握っているかによって千差万別だ。「原因不明」という結果が出たのは、調査当局が基礎的な情報収集段階からしてベンツやバッテリーメーカーに完敗していたためだと解釈せざるを得ない。このため被害者は、ベンツが社会貢献を通じて被害を救済してくれるよう望むという、矛盾した状況に置かれることになった。

 現在行われている最も重要な製造物関連の捜査・調査は、昨年12月29日に務安国際空港で発生したチェジュ航空機事故だ。同事故の捜査・調査は韓国国土交通部(省に相当)の航空鉄道事故調査委員会と警察が担当している。近日中に事故エンジン2基をエンジンメーカーの分析施設があるフランスに送る予定だ。

 事故機のブラックボックスが本来の機能を果たしていない状況において、今回のエンジン分析は事故状況を把握するのに決定的な役割を果たす可能性が高い。これにはエンジンを作ったフランスのサフラン社だけでなく、米ゼネラルエレクトリック(GE)社、飛行機を作った米ボーイング社、米国家運輸安全委員会(NTSB)なども参加する。179人が死亡した事故ということで天文学的な額に達するであろう民事訴訟に備える意味でも、自らの欠陥は小さくあいまいに、相手の過失は大きく明確にしなければならないという点が、全ての調査参加者の目標であり、冷静な現実だ。

 懸念されるのは韓国の調査能力だ。韓国航空鉄道事故調査委員会の航空調査官は9人しかいない。米国・フランス・日本の調査委員会の場合、調査官1人が1年間に担当する件数は1件にもならない。しかし、韓国は多い場合で3-4件も抱えている。行政面の人材も不足しており、調査官が調査だけでなく行政関連業務も合わせて行うという。国際民間航空機関(ICAO)では航空事故調査を事故発生日から1年以内に完了するよう勧告しているが、韓国は到底、これに合わせられる状況ではないと思われる。人員がいないので、研究や教育機能が不足していることも悪循環を生んでいる。

 このため、務安空港事故の原因究明も懸念が払拭できない。被害者は明らかに存在するのに、事故原因が明確でなければ、政府はその時に何と弁明するのだろうか。

キム・アサ記者

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  • ▲チェジュ航空機事故から7日たった今年1月4日、務安国際空港のローカライザー(方位角表示施設)から回収された2基目のエンジンがトレーラーに乗せられ、運ばれている様子。写真=聯合ニュース

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