最近人気の韓国ドラマ『おつかれさま』には、貧しかった時代に家族が食卓を囲んで食事をするシーンが何度も登場する。ソウルに行った娘が一人で失恋の痛みに耐えているとき、済州に住む両親が電話をして娘にかける言葉は「ご飯食べたか」だ。娘は「ご飯食べたかって電話を1000回くらいもらったとき、激しい空腹を感じた。お母さんのご飯が食べたくなった」と言った。済州島の実家に帰った娘の第一声は「お母さん、私、ご飯。おなかすいた」だった。心が空腹になってしまった娘に、両親は休みなくご飯を作って食べさせる。「太っちゃう」と文句を言いながらも、娘は両親に世話を焼かれることを「私がこの世から100グラムたりとも消えないようにするもの」と表現した。
【写真】目は大丈夫? 学習塾で鉛筆で額から顎まで引っかかれた児童
ソウル・大峙洞の学習塾街で、生徒たちが塾の次に多く訪れるのがコンビニだ。家でまともなご飯を食べる代わりに、塾から次の塾へと移動する隙間時間を利用しておにぎりやカップ麺のような軽食を食べ、それで1食分を済ませてしまうのだ。塾通いで忙しい子どもだけが「路上飯(道端でご飯を食べること)」や「ぼっち飯(一人でご飯を食べること)」をしているのではない。少し前には女性コメディアンが、数百万ウォン(約数十万円)のダウンジャケットを着て高級外車の運転席に座り、ブランドバッグからキンパ(韓国のり巻き)を取り出して食べながら子どもの塾のスケジュールを管理する「大峙洞ママ」をこっけいに演じ、話題を集めた。
韓国の12-18歳の28%が栄養不足だという衝撃的な統計が発表された。十数年前にはこの割合は15%だったが、倍近くに増えたのだ。家が裕福であるにもかかわらず栄養不足だという青少年が増えた。家で温かい料理を食べるのではなく、塾と塾の隙間時間にカップ麺を食べるという生活を続けた結果だろう。私教育(塾や習い事など)に全てを賭ける保護者たちの戦争によって、母性愛が色あせるという結果が生まれている。一日のうち1食を「ぼっち飯」で済ませる青少年は、そうでない青少年に比べてストレス指数が1.4倍高く、2食以上を「ぼっち飯」で済ませればうつ病を発症する可能性が2.6倍増加するという研究結果もある。
性別で見ると、20代女性の栄養不足も非常に深刻だ。4人に1人が栄養摂取不足だ。さらに、韓国の20代女性の6-7人に1人は低体重の状態だ。スリムなスタイルに異常に執着するあまり、正常な体重の女性ですら自分を「太っている」と考えて半数以上がダイエットを試みる。
先日発表された世界幸福度報告書で、韓国の幸福度指数は世界147カ国のうち58位だった。主観的幸福指数は、初めて発表された12年前よりも下落した。家族などと一緒に食事をする人が幸せを感じる中、「ぼっち飯族」が増えて食事をおろそかにしていることも幸福度が下がっている主な原因の一つだという。家族と一緒に食べるご飯の時間の大切さをあらためて考えさせられる。
姜京希(カン・ギョンヒ)記者