憲法裁判所は24日、韓悳洙(ハン・ドクス)大統領権限代行兼首相に対する弾劾訴追案を棄却した。内乱行為の共謀・ほう助や憲法裁判所裁判官任命拒否などを理由に、韓国野党・共に民主党が昨年末に弾劾訴追してから87日目だ。韓悳洙代行は直ちに業務に復帰した。内乱共謀や特別検事任命遅延、金建希(キム・ゴンヒ)特別検事法拒否、韓東勲(ハン・ドンフン)元与党・国民の力代表との共同国政運営の四つの点について裁判官の多くが違法とは見なせないと判断したのだ。また憲法裁判所裁判官を任命しないのは憲法と法律の違反だが、罷免の理由にはならないとの見方も示した。
この結果、共に民主党が強行成立させた13回にわたる首相、長官、検事らの弾劾訴追案のうち、憲法裁判所の決定が下された9件は全て棄却となった。正当性のない政略的弾劾だった事実が改めて確認された形だ。韓悳洙代行に対する弾劾訴追は尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の職務停止に伴う極度の政治的混乱、また米国のトランプ政権による米国第一主義政策による経済や安全保障上の危機の中で強行され、国政の混乱や国論分裂を一層深刻なものとした。共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表の選挙法違反に対する最終判決が出る前に大統領選挙を行いたいという焦りが原因だ。国政紊乱(びんらん)と言ってしかるべきだろう。
ところが李在明代表は反省や謝罪どころか「国民は納得できない」とあからさまに不満を口にした。また韓悳洙代行と憲法裁判所に対しても「直ちに馬恩赫(マ・ウンヒョク)裁判官候補者を任命し、尹大統領に弾劾を宣告せよ」と圧力を加え、崔相穆(チェ・サンモク)経済副首相の弾劾も強行する構えだ。崔相穆副首相はこれまで経済や安全保障など国政全般を総括し、山火事などの災害対応にも当たってきた。弾劾理由とされる裁判官任命遅延や内乱共謀はすでに韓悳洙代行の弾劾審判で棄却された事案であるため、韓悳洙代行の復帰で弾劾の実益も失われた。そのため共に民主党による弾劾の動きはもはや政治報復目的の不満の表出にしか見えない。崔相穆副首相は経済政策の司令塔だ。共に民主党は弾劾暴走や国政妨害をやめ、崔相穆副首相の弾劾も直ちに撤回すべきだ。
憲法裁判所は権限代行の弾劾案採決時の国会の議決定足数を大統領基準の200議席ではなく国務委員(閣僚)基準の151議席と判断した。権限代行は憲法上の予定された機能や課業を遂行するに過ぎず、憲法でその地位が定められたものではない点がその理由とされた。しかし権限代行は大統領の役割を実質的に果たす非常に重い職責だ。権限代行弾劾の定足数を「国会の過半数」とするなら、国会の過半数を占める政党は大統領権限代行の弾劾をいつでも政略的にごり押しできる。これでは非常事態の中で正常な国政の遂行は難しくなる。
2人の裁判官は弾劾の定足数を200議席にすべきとの意見を出したが、これも上記の理由からだろう。共に民主党は実際に「(権限代行となった国務委員を)しっかりと弾劾してやる」とすでに表明している。繰り返される弾劾と厳しい政治対立局面が続けば国政の安定は期待できない。権限代行の弾劾訴追定足数に対する憲法上の議論は今後も続けるべきだろう。