ホーム > 国際 > 国際総合 print list prev

「世界で最も成功した広報文化外交」 ワシントンで桜満開、日本の時間がやって来た

日本が1912年に3000本の桜の花を寄贈

毎年春にワシントンで全米桜祭り…米日友好のシンボルに生まれ変わる

対米広報文化外交における最高の成功事例とも

 「桜は非常に弱い木です。特に湿気には非常に弱いので、風通しがとても重要になります。東側の空き地から風が吹いてくるおかげで、この木は朝の日差しを浴びながら100年以上も花を咲かせました」

【写真】桜の花が描かれたワシントンの地下鉄車両

 今月18日にワシントン中心部の駐米日本文化院で米イリノイ工科大学(IIT)アルファウッド樹木院のローン・ヘンダーソン教授(造形学)が講演し、ピンクの桜の花が描かれたスライドを1枚1枚ゆっくりと映し出しながら桜について説明した。ヘンダーソン教授は2012年春に東京や京都など日本全国を4カ月かけて視察した際、桜の魅力に完全にはまり、視察の記録を整理し書籍として発行した。この日行われた講演は退勤時間帯の午後6時30分から始まったが、ヘンダーソン教授の講演を聞くため日本文化院には100人以上が訪れ会場は座席が全て埋まった。非営利団体の職員というネイサンさんによると、日本大使館や文化院が主催するプログラムは以前から人気が高く、到着が遅れたらすぐに席がなくなるという。ヘンダーソン教授が日本から持ってきた苗木に直接触らせてくれたことも、来場者から非常に好評を博した。

 米国の首都ワシントンの名物となった桜の満開が近づいている。例年よりも気温が高いためかホワイトハウスや議会、リンカーン記念館やジェファーソン記念館などワシントン中心部の桜の名所ではすでに多くの桜の花を見ることができる。ワシントンに植えられた桜のほとんどは、1912年3月に当時の尾崎行雄・東京市長が米日友好の象徴としてプレゼントした3000本のソメイヨシノの苗木から始まった。当時背後で影響力を行使したのはタフト大統領の妻のヘレン夫人、そして外交官だった兄と日本を旅行した際に「ワシントンに桜を植えたい」という夢を抱いたエリザ・シドモアだった。昨年4月に米国を国賓待遇で訪問した日本の岸田文雄首相(当時)は米国独立250周年(2026年)を祝う意味合いから250本の桜を寄贈した。岸田首相は「本来の寿命とされる60年よりもはるかに長い100年以上にわたり、ワシントンの桜は今に至るまで生き続けてきた」「地域住民の皆さまが桜を大切に守ってくださったように、米日関係も互いに愛し合う人たちの支持を受けられたらこれ以上の喜びはない」と述べた。

 タフト大学フレッチャー・スクール学長だったエドモンド・ガリオン博士が提唱した「公共外交(public diplomacy)」(広報文化外交)という概念は、相手国民の心を自然に開かせる外交手法を意味する。また毎年この時期に日本はワシントンの各地で満開となる桜を利用し、公共外交の精髄を見せてくれる。米国の主要メディアもこの時期に「ワシントンはどういう経緯で日本の桜でいっぱいになったのか」という記事を毎年のように掲載するが、これも世界で最も成功した公共外交とされているからだ。今月20日から来月13日まで開催されるワシントン市当局主催の「全米桜祭り」には日本の全日空(ANA)が米アマゾンと共に最上位スポンサーを意味する「リーダーシップ・サークル」として名を連ねる。全米から毎年150万人がこの桜祭りを見るためワシントンを訪れ、この時期だけでワシントンの観光収入全体の3分の1以上が集まるという。駐米日本大使館はもちろん、大手製薬会社の第一三共、日本国際交流基金、三菱、丸紅、パナソニック、レクサスなど日本からの数十の大手企業などがスポンサーとなり、日本政府の大物政治家などもこの時期にワシントンを訪れ対米アウトリーチ(働きかけ)に力を入れている。

 日本文化院で開催されたヘンダーソン教授の講演から3日後、国立樹木院では桜保存に関するイベントが追加で開催されたが、これも大盛況だった。日本文化院は「ワシントンでは毎年150万人以上が花見を楽しみ、米日の友情を深めている」と発表した。また日本文化院は「桜の写真コンテスト」を同時に開催し、これには数千枚の応募があったという。実際に18日のヘンダーソン教授の講演の際、日本文化院1階通路には優秀作品が数多く展示されていた。日本政府が数カ月前から支援に乗り出すこともあり、桜祭り前後にはワシントンのレストランや酒を提供する店はどこもすし、酒、茶道、ウイスキーなど日本文化を前面に出したイベントで集客に力を入れる。SNS(交流サイト)でも自然に「桜祭りのおいしい日本食」「ワシントンで日本文化を深く体験できる場所」などのコンテンツばかりで善の循環が形成される。桜祭りをテーマとする大手ホテルの宿泊ツアーはすでにほとんどが売り切れだ。

 この時期には米日関係、日本の外交・安全保障、米日に第三国を含めた3カ国協力などをテーマとする本格的なイベントも集中的に開催される。米シンクタンクのスティムソン・センターは25日「より深まった米日同盟」をテーマにセミナーを開催する。26日には日本の対米アウトリーチの拠点とも言えるマンスフィールド財団が日本大使館と共同で「米日間の立法協力」に関するブリーフィングを米議会で行う予定だ。ワシントンを代表するシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)は日本とのエネルギー、ハイテク技術協力、軍用機の整備・修理・オーバーホール(MRO)などをテーマとするイベントを今月だけで3回開催する。日本の笹川財団などは日本について研究する研究者や大学生などに全面的な支援を惜しまず、訪日プログラムを企画し彼らが知日派となるよう重要な役割を果たしている。

ワシントン=金隠仲(キム・ウンジュン)特派員

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • ▲ワシントンで満開となった桜の花/ワシントンDC観光庁
  • 「世界で最も成功した広報文化外交」 ワシントンで桜満開、日本の時間がやって来た

right

あわせて読みたい