3月3日にソウル・ワールドカップ競技場で行われたサッカーKリーグのFCソウルと金泉の試合で大きな話題となったのが「ピッチの芝生」だ。ボコボコでポコンと開いた穴がピッチ上に数多く見られたからだ。町のサッカーチームでさえ文句を言いそうなピッチで韓国プロサッカーKリーグ1部の試合が行われたのだ。FCソウルのキャプテンだったリンガード選手は全力失踪中に足を取られ捻挫しそうになった。試合後に選手たちと監督は全員が芝について激しく抗議した。
【写真】穴の開いた芝ピッチに怒りをあらわにするリンガード選手
今月韓国で予定されているサッカー・ワールドカップ(W杯)アジア予選2試合は京畿道高陽と水原で行われるが、大韓サッカー協会は観客収容人数が最も多い(6万6000人以上)ソウル・ワールドカップ競技場は使わないという。高陽と水原は4万人台だから、これではサッカーファンの「観戦権」が奪われたようなものだ。理由はそのずさんな芝ピッチのためだ。全州ワールドカップ競技場も先月、アジア・サッカー連盟(AFC)から「AFCチャンピオンズリーグの試合会場として不適切」との判定を受けた。これもピッチの芝の状態が悪かったからだ。
最近プロサッカーKリーグの選手たちは試合前に「今日はけがしないように」と互いに決意するという。多くの会場でピッチの芝管理がずさんなため、試合で負傷するリスクが非常に大きくなっているからだ。「試合を強行すること自体が判断ミス」との指摘も相次いでいる。
ピッチの芝の状態が悪化した原因は複数ある。まず使用者と所有者が違う。Kリーグ1部(12チーム)の試合が行われる会場のうち、浦項と大田を除く10会場は所有主が都市公社や施設管理公団などの公共機関だ。そのため使用する側のチーム関係者たちは「大家ではなく借り主が家を修理するのか」と文句を言う。これに対して大家(所有主の公共機関)の側は予算や人手不足を訴えている。チームから使用料はもらいたいが、管理まで完璧にしたいとは思わないという本音も垣間見える。昨年ピッチ管理のための地方自治体の予算はソウル市が11億ウォン(約1億1000万円)、全州市は2億1000万ウォン(約2100万円)で、日本のJリーグなど他国のスタジアムと比較すると「天地の差」というのがサッカー関係者の話だ。
「借り主」であるチームの状況も理解できなくはないが、「あまりに無責任」との印象も拭えない。芝のせいで通常の試合ができない事態がたびたび発生しているが、芝管理の予算や人材を別途確保しているチームはほとんどない。家族(所属選手)が来て生活しているのに、大家(公共機関など)が修理してくれないからと言って、割れた窓ガラスや故障した水道蛇口を放置するようなものだ。
ピッチの芝問題は昨年から何度も指摘されてきたにもかかわらず、プロサッカー連盟もどんな対応をしているのかよく分からない。2022年にサムスン物産の芝環境研究所とコンサルティング契約を結び、今年から芝関連の部署を新たに設置するそうだが、現時点で目に見える成果は出ていない。
ピッチの芝を巡る一連の問題についてあるサッカー関係者は「国際的な恥だ」とした上で「韓国を代表する(ワールドカップ)競技場がこの程度のレベルだ。これも深刻な問題だが、誰も改善に乗り出さないことがもっと大きな問題だ」と指摘した。
イ・ヨンビン記者