それでも産業銀は「海航集団の信用格付けには問題がなく、プロジェクトは海航集団のリスクとは関係がない」とする内容の内部報告書を作成した。それに基づき、産業銀は同年7月3日に美蘭空港拡張プロジェクトへの投資を最終決定し、7月13、14日に投資資金と貸付分の1億3350万ドル全額をIAPとの合弁ファンドに送金した。
計画に従えば、資金はSPC経由でHNAファイナンスIIに渡らなければならなかった。しかし、中国側は資金を直接を香港所在のHNAファイナンスIIの口座に送ることを要求し、7月14日にその通りに資金が送金された。
中国側の管理下に入った韓国側の資金は、4日後に美蘭空港公司に貸し付けられた。しかし、その資金がプロジェクトに投入されることは一度もなかった。産業銀が投資の実行を何度も要求したが、中国側はそれを無視したという。
美蘭空港公司は20年4月に利払いを中断し、21年1月には海航集団が破産した。中国の裁判所による決定を受け、韓国側は海航集団や美蘭空港公司などの資産の売却代金からわずか0.3%のみ配分されることが決まった。産業銀は資金回収が現実的に難しいと判断し、出資分と貸出分の全額を損失処理した。産業銀が失った政策資金は6134万ドル(約900億ウォン)に達した。産業銀が募った韓国の国内投資家も損失を被った。
産業銀の美蘭空港へのプロジェクト投資は16年2月から17年9月まで在任した李東杰(イ・ドンゴル)元会長の当時に実行された。氏名が同じ発音である後任の李東傑前会長が在任中の21年7月には、産業銀検査部がこのプロジェクトに問題がなかったか監査した。しかし検査部はプロジェクトの投資決定過程における問題点を見落としたまま、「損失はコロナに伴う美蘭空港公司の営業不振と海航集団の破産が原因」という結論を下し、関係者の責任を問わなかった。
監査院は産業銀に対し、今後の海外投資に際し、リスクの検討に留意するよう促した。産業銀関係者は「21年にすでに損失処理が終わった事件だ。当時投資を担当した実務担当者が全員退職しており、正確な事実関係を確認することは難しい」と話した。
キム・ギョンピル記者