中国のネット民を中心に中国本土から1500キロ離れたフィリピンのパラワン島は自国領だという主張が登場して論議を呼んでいる。フィリピン政府はそれを「宣伝行為」と位置づけて強く反発した。
【写真】中国SNSの主張を批判するフィリピン国立歴史委員会の投稿
香港紙サウスチャイナ・モーニングポスト(SCMP)は4日、中国のソーシャルメディアの抖音(ドウイン)と小紅書でパラワン島が本来「鄭和島」と呼ばれていたという投稿が1月から広がったと報じた。パラワン島が明の宦官で1400年代に大遠征を率いた探検家として知られる鄭和(1371–1434)の名前にちなみ「鄭和島」と命名された中国の土地だったとの主張だ。抖音のユーザーは「歴史的にパラワン島は中国に属する。我々がそこを失ったのは、我々の力が足りなかったためだ」と主張し、「いいね!」の数が1万4000件に達した。
パラワン島はフィリピン南西部に位置しており、同国で5番目に大きい島で、南シナ海と隣接している。中国は自国領土から1500キロも離れたパラワン島に対し、公式には領有権を主張していない。パラワン島は中国がこれまで南シナ海の領有権を主張してきたラインであるU字型の「九段線」の外側にある。
これに対し、フィリピン国立歴史委員会(NHCP)は「5万年前から人類が暮らしていたパラワン島に中国人が永久定着したという証拠はない」とする声明を出した。NHCPは1521年にポルトガルの探検家フェルディナンド・マゼランの世界一周に同行し、航海の記録を残したイタリア人、アントニオ・フィガペタも中国人の定着に関連する記述を残していないと強調した。フィリピン軍のパディーリャ報道官は「こんなとんでもない主張はもはや驚くことではない。彼らが多くの宣伝資料を出していることは周知の事実だ」と述べた。
中国の一部ネット民も「完全なうわさであり、我が国の外交政策と主権に対する理解と全く合致しない」「私たちがどんな地政学的覇権を追求しているかを誇張するだけだ」などと反論した。
専門家も歪曲(わいきょく)された主張を展開する中国のネット民を批判した。台湾国防安全研究院のシャーウィン・オナ国際フェローは「国際社会を対象にした戦略的虚偽情報流布キャンペーン」だとし、南シナ海に対する中国の主張を後押しする意図があると分析した。フィリピン大のエドセル・イバラ助教授(政治学)は「これは心理戦の一部になり得る。混乱を助長し宣伝の影響力を示そうとする狙いだ」と話した。フィリピン大のエンリコ・グロリア助教授(政治学)は「これは中国のソーシャルメディアで極端な民族主義の声が高まっていることを示すものだ。当局はフィリピンと中国の間で不信感だけをあおる強硬な主張を規制、検証するためにもっと努力を傾けるべきだ」と主張した。
イ・ヘジン記者