韓国中央選挙管理委員会の金世煥(キム・セファン)元事務総長が在任期間中に選管名義の「携帯電話サブ機」を作って政治家たちと連絡していたことが監査院の監査で明らかになった。 2022年の大統領選挙や地方選挙を控えていた時期のことだった。また、金世煥氏は退任後もさらに1年8カ月間この携帯サブ機を使用していたことが分かった。監査院がこの携帯電話機を確保した時は工場出荷状態に初期化されるなどしてデータが削除されており、デジタル・フォレンジック(電磁記録解析)作業をしてもデータ復旧が不可能な状態だった。この携帯電話機でいつ、誰と通話したのか確認するのは難しい状態だったということだ。
【表】韓国選管に免罪符を与えた憲法裁判官8人中6人は選管委員長経験者
選管の命は政治的中立と独立性を守ることだ。その選管の幹部が政治家との連絡用として別の携帯電話機を使っていたということ自体、疑惑を招く。しかも、この携帯電話機をフォレンジックしてもデータ復旧が難しい状態にしていたとすれば、なおのことやましいことが行われた可能性が高いと言える。事務総長が特定の政治家とひそかに連絡を取り合っておきながら「業務を公正に処理していた」などと、どう断言できようか。
ただでさえ選管は驚くべき採用不正、脆弱(ぜいじゃく)なセキュリティー、ずさんな選挙管理などで激しい批判を受けている。監査院が公表した選管の採用不正実態を見ると、この10年間に行われたキャリア採用291回のうち、規定違反が878件もあったという。違反がない採用は一度もなかった。採用不正の情報提供や通報があると、「われわれはファミリー企業だ」「親族採用の伝統がある」という理由で黙殺したというのだから、あきれてものが言えない。税金で運営されている組織に、このような組織はなかっただろう。北朝鮮のハッキング攻撃を受けても気付かず、大統領選挙時に記入済み投票用紙を籠に入れて移すなど、ずさんな管理もしていた。
監視の死角地帯であるだけでなく、政治的中立性まで疑わざるを得ない選管を、これ以上このままにしておくことはできない。大々的な選管改革の必要性や、選管を国民の監視下に置かなければならないことに同意しない国民はいないだろう。まずは、選管特別監査官の導入や国政調査を通じてでも選管の腐敗実態をきちんと解明し、追加協議を経て選管を国民がきちんと監視し、けん制できる制度を必ずや設けなければならない。