12月3日の非常戒厳令に関する捜査初期、高位公職者犯罪捜査所(公捜処)は尹大統領や金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防部(省に相当)長官らに対する家宅捜索・通信・逮捕令状をソウル中央地裁に16件、ソウル東部地裁に1件請求していた。ところがこれらが棄却されたため、その後ソウル西部地裁に令状を請求し尹大統領の逮捕状発布を受けていたことが分かった。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弁護団が21日に明らかにした。当時ソウル中央地裁が棄却した家宅捜索令状と通信令状のうち、3件は尹大統領に関するものだったという。
これについて公捜処は「令状管轄および捜査権の部分はすでにソウル中央地裁とソウル西部地裁による複数回の令状裁判で何の問題もないと確認を受けた」と反論している。しかし尹大統領の弁護団は「公捜処は不法な捜査を行った」として尹大統領の勾留取り消しと釈放を要求した。令状を棄却したソウル中央地裁などではなく、公捜処が別の裁判所に尹大統領逮捕状などを請求したとされるいわゆる「判事ショッピング問題」は今後も続く見通しだ。
尹大統領弁護団の1人である尹甲根(ユン・ガプクン)弁護士は同日「(公捜処は)昨年12月6日、(ソウル中央地裁に)尹大統領を被疑者と明記した家宅捜索・通信令状を請求したが棄却された。12月8日にも(尹大統領に対する)家宅捜索令状を請求したが、やはり棄却された」とした上で「これを受け公捜処は12月30日に逮捕・家宅捜索令状を西部地裁に請求した」と明らかにした。弁護団は7万ページ分量の捜査記録を読み、これら一連の事実を確認したという。
尹大統領の弁護団は当時棄却された令状の内容も公開した。これらは昨年12月6日から11日まで中央地裁に請求した尹大統領、韓悳洙(ハン・ドクス)首相、李祥敏(イ・サンミン)元長官、呂寅兄(ヨ・インヒョン)元防諜司令官などの家宅捜索・通信・逮捕令状だった。弁護団は「2024年12月26日から30日までの間に令状番号2024-6逮捕令状がソウル中央地裁に請求されたと推定されるが、捜査記録には記載されていなかった」とも指摘した。
ソウル中央地裁が令状を棄却した理由について公捜処は「『同一または類似内容の令状が重複請求されている』などであり、公捜処に内乱罪の捜査権がないとの記載は全くない」とも反論した。公捜処と警察は昨年12月11日に共助捜査本部を立ち上げ、その後昨年12月30日に公捜処はソウル中央地裁ではなくソウル西部地裁に尹大統領の逮捕令状を請求した。その際に公捜処は公捜処法の例外条項を適用したという。公捜処法によると、公捜処法の一審管轄裁判所はソウル中央地裁だが、犯罪の場所や証拠の所在地などを考慮できるとする例外条項がある。尹大統領の弁護団は「公捜処があえてソウル西部地裁に行った理由は明らかだ。『ウリ法研究会』出身者が掌握しているソウル西部地裁でしか令状を確保できないことを知ったからだ」と主張した。
公捜処が虚偽の答弁をした問題も浮上した。韓国与党・国民の力の朱晋佑(チュ・ジンウ)議員は先日、公捜処に対し「尹大統領の事件と関係する家宅捜索・通信令状などをソウル中央地裁に請求したことはないのか」と質問する文書を送付したが、これに対して公捜処は「ソウル中央地裁に尹大統領の令状を請求した事実はない」と書面で回答した。ところが今回公捜処は「ソウル中央地裁に尹大統領逮捕および拘束令状を請求した事実はない」としながらも「被疑者・尹錫悦他3人、被疑者・尹錫悦他4人を被疑者とする家宅捜索令状および尹錫悦ら32人に対する通信令状を請求した」と明らかにした。尹大統領の弁護団は同日、虚偽公文書作成などの容疑で呉東雲(オ・ドンウン)公捜処長らをソウル中央地検に告発した。
李世永(イ・セヨン)記者、イ・ミンジュン記者