尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾審判を審理する憲法裁判所の一部裁判官に対し「政治偏向」との指摘が広がっている。政界は、文炯培(ムン・ヒョンベ)憲法裁判所長権限代行が10年以上前にSNS(交流サイト)で野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表と交流した事実をはじめ、家族の政治的傾向まで指摘するなど批判を強めている。法律に詳しい専門家の間からも「公正という外観」を持つべき憲法裁判所が政治偏向と批判を受ければ、それだけで弾劾審判の正当性が大きく傷つく恐れがある」など懸念の声が相次いでいる。
この問題は憲法裁判所自ら招いたとの指摘もある。憲法裁判所は今月23日、李真淑(イ・ジンスク)放送通信委員長弾劾案を棄却したが、その際に棄却と認容は4対4に分かれた。これは裁判官らの陣営と政治的な考え方がそのまま反映したためと言われている。進歩(革新)系とされる文炯培権限代行と李美善(イ・ミソン)裁判官や鄭桂先(チョン・ゲソン)裁判官らが李真淑委員長罷免に票を投じたのだ。ある憲法学者は「偏向との批判が相次いでいる理由は、法理ではなく裁判官個人の考えに基づく判決が出たためだ」と指摘する。
尹大統領の弾劾審判で裁判長を務める文炯培権限代行は過去にフェイスブック、ブログ、ツイッターに投稿した内容が問題となっている。文炯培権限代行は2011-13年にSNSで司法研修院同期の李在明(イ・ジェミョン)代表と少なくとも7回、政治的・個人的な懸案を巡りやりとりした事実が知られている。李在明代表は城南市長だった11年7月、文炯培権限代行のフェイスブックに「文官(文炯培判事)様、お元気ですか? 奥さまにもよろしく」とコメントし、これに文炯培権限代行は「市長さま、ご苦労さまです」と返答した。
また判事時代には裁判所の進歩系グループ「ウリ法研究会」で会長を務め、2010年には自らのツイッターに「あえて分類するなら、ウリ法研究会内部で私が最も左側にいるはずです」とツイートした。さらに同年ブログに国連軍参戦兵士墓地(国連記念公園)を訪問したことを伝えた際「戦争という方法で統一を目指した者ら」という言葉を使った。これに対して「国連軍を批判した」との批判が相次いだため、29日にフェイスブックに「原文を読め」という書き込みとブログのリンクを掲載した。
ある法律の専門家は「大法官(最高裁判所判事)や憲法裁判所裁判官はもちろん、一般の判事や研究官らも、誤解を受けるようなことは避けるためSNSの利用は自制している。10年以上前の書き込みではあるが、裁判長がこんなことで話題になれば弾劾審判の信頼性が大きく傷つくだろう」と指摘した。