高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の出頭要求に応じなかった尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対し、公捜処は22日にソウル拘置所から尹大統領を強制勾引しようとしたがまたも失敗した。20日と21日に続き3回目だ。強制勾引は被疑者を取り調べるため例外的に行う方法で、相手が軽犯罪者であってもめったに行われることはないが、それは被疑者が陳述の拒否権を行使すれば実効性が期待できないためだ。尹大統領はすでに「公捜処にはこれ以上言うことはない」と明言しており、その尹大統領を勾引してももはや取り調べは進まない。それでも公捜処が勾引を繰り返し試みる理由は取り調べが目的ではなく、大統領を拘置所から引き出す様子を見せる意図の方が大きい。典型的な見せるための捜査だ。
公捜処が20日に強制勾引を試みた際、尹大統領は憲法裁判所の弾劾審判に出席するため弁護士らと会っていた。防御権行使のためにその時間は当然保証しなければならないが、それでも公捜処は強制勾引に乗り出した。21日には公捜処も尹大統領が憲法裁判所に出席した後に病院に移動した事実を知りながら、ソウル拘置所に向かいまたも勾引しようとした。行き過ぎだと言わざるを得ない。
公捜処は先日尹大統領に対し、弁護士を除く全ての人物との面会禁止、書信の受信や送付を禁止する決定を下した。これら一連の対応も証拠隠滅の恐れがあるときに限り例外的に行われるものだが、尹大統領周辺でそのような動きは今のところ全く確認されていない。しかもすでに内乱容疑関係者のほとんどが身柄を拘束されており、かなりの証拠も確保されている。それでも公捜処がこのような動きを示すのは、出頭要求に応じなかったことへの「報復」としか考えられない。
公捜処は内乱罪の捜査権がないにもかかわらず、尹大統領の捜査に無理に介入している。大統領を捜査すると言いながら、その方法などの調整も行わず、一方的に3回にわたり出頭を命じ、これに応じないと逮捕状を請求した。逮捕も聴取や取り調べが目的の単なる手続きに過ぎない。聴取が目的ならさまざまな方法を検討することも可能だ。しかし公捜処はそれらの努力もせず、多くの警察官を動員し令状執行を強行した。これも聴取や取り調べではなく大統領官邸から引きずり出す様子を見せるという政治的な意図が大きかった。このような状況を招いたのは尹大統領が出頭に応じなかったこともあるだろう。しかし公捜処の無理な捜査は状況をさらに悪化させている。