尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が21日、憲法裁判所の弾劾審判に自ら出廷した。尹大統領は、非常戒厳宣布の名分として提示した不正選挙疑惑について「非常戒厳宣布前、選挙の公正性に対する信頼に疑問を抱くことがいろいろとあった」「選挙が全て不正なので信じられないという陰謀論を提起しているのではなく、ファクトチェック(事実確認)をしようという見地だ」と述べた。これは、「非常戒厳宣布を正当化するため、後付けで不正選挙疑惑を主張している」という指摘に反論する際に述べた言葉だ。尹大統領は「2023年10月、国家情報院が選挙管理委員会の電算装置のごく一部を点検した結果、多くの問題があった」「不正選挙そのものを捜し出せというのではなく、選管の電算システムを全般的に点検できるならやってみよと言ったものだ」と述べた。
【写真】「ファクトチェックの見地から」尹大統領側が提示した不正選挙疑惑画像の一部
尹大統領のこうした言及は、つい最近までの主張とは大きく異なる。尹大統領は15日に発表した文で「不正選挙の証拠はあまりにも多い」「選管のでたらめなシステムも全て明らかになった」と述べていた。その上で「おびただしい偽の投票用紙が発見された」「総体的な不正選挙システムが稼動された」とも言った。200字詰め原稿用紙44枚に達する文章の相当部分を不正選挙疑惑に割いたのだ。大統領のこうした主張が事実ならば深刻な国家的事態だ。ところが、この途方もない主張をした大統領が数日後に「選挙が不正で信じられないという陰謀論ではなく、事実確認のため」と言ったのだ。
韓国社会の一部に広がっていた不正選挙論は、尹大統領が自ら加勢し、危険な水準まで迫り、悪化した。それならば、尹大統領は責任感を持って「おびただしい偽の投票用紙」「総体的な不正選挙システム」「敵対的海外勢力の選挙介入」について具体的な説明をしなければならない。この日、尹大統領側の弁護人らも、世間で飛び交っている不正選挙のうわさを何の根拠もなく主張した。
不正選挙の主張が確認もされず、証拠もないまま拡散されれば、社会的分裂は深まる。尹大統領が非常戒厳を宣布し、選管に戒厳軍を投入した理由が本当に「不正選挙」のためならば、このように無責任でつかみどころのない振る舞いをしてはいけない。尹大統領が何の証拠もなしに重大な主張をし、社会的混乱を招いているとすれば、それこそまさに陰謀論だ。