■元職・現職大統領の中では初となる勾引の試み…公捜処「またやるつもり」
公捜処は20日午前10時、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領を呼び出したが、尹大統領は応じなかった。すると公捜処の関係者は「現在の状況においては強制勾引を有力に検討している」「拘置所訪問取り調べも完全に排除はせず検討中」と述べた。その上で、判例を提示して「強制勾引が可能」という点を強調した。2013年に、拘束令状が発布されて拘禁されている被疑者が取調室への出席を拒否する場合、拘束令状の効力によって取調室へ勾引できる-と大法院(最高裁に相当)が判断した事例を根拠に挙げた。
午前中の時点では「検討中」としていた公捜処は、午後3時ごろ、検事や捜査官など6人をソウル拘置所へ送り、午後9時まで6時間にわたって尹大統領の強制勾引を試みた。人権保護捜査規則上、午後9時以降は取り調べができないことになっているが、その時間まで、公捜処へ強制的に連行して取り調べをしようとしたわけだ。
公捜処が尹大統領の強制勾引を試みていた時刻、大統領警護処は逆に公捜処の庁舎を訪れて保安検索を進めた。警護対象である大統領が移動することに備えて、あらかじめ要所を把握したものだと伝えられている。
公捜処は、尹大統領が供述を拒否してでも対面での取り調べを通して、容疑を否認するものであっても調書を取ってこそ起訴が可能とみている。公捜処の関係者は「被疑者尋問の調書が証拠として無価値ということもあり得るが、捜査報告書などは記録につづって裁判所に渡さなければならない」と語った。
法曹界からは「捜査に協力しないからといって、報復的に現職の大統領を強制的に連れていきたいということ自体が無理な捜査」との批判の声が上がった。検察のある関係者は「歴代大統領だけでなく、重要人物の場合、訪問取り調べなどの合理的な方法を探して事情聴取をすべき」だとし「公捜処が実効性もない強制勾引を試みたものとみられる」と語った。
過去の元大統領の取り調べ事例を見ると、ほとんどが警護上の問題などにより拘置所への訪問取り調べで代替していた。国政介入事件で2017年3月に身柄を拘束された朴槿恵・元大統領は、ソウル拘置所に用意された臨時の取調室で訪問取り調べを受けた。全斗煥・元大統領と盧泰愚・元大統領はそれぞれ、収監されていた安養刑務所とソウル拘置所で取り調べを受けた。2018年3月に身柄を拘束された李明博・元大統領は、検察が数回にわたって訪問取り調べを試みたが李・元大統領が拒否し、事情聴取は不発に終わった。
大検察庁(最高検に相当)は20日、公捜処に尹大統領の事件の送付について話し合おうと公式に要請した。尹大統領を起訴する権限がない公捜処に、事件移管の時期を話し合おうと提案したのだ。
イ・スルビ記者、パク・ヘヨン記者、ク・アモ記者