憲法裁判所は15日、李真淑(イ・ジンスク)放送通信委員長に対する弾劾審判の弁論を終結した。弾劾訴追から5カ月だ。李真淑委員長が弾劾訴追されたのは就任から2日後だ。違法行為をやる時間もなかった。ところが野党・共に民主党はMBC放送を自分たちの側に留め置くために弾劾を強行した。これでは弾劾の審理に時間はかからないはずだが、実際は5カ月かかった。その点が自分でもひっかかったのか、文炯培(ムン・ヒョンベ)憲法裁判所長権限代行は「裁判に時間がかかったのは残念に思う」と述べた。それでも宣告日は指定しなかった。共に民主党の顔色をうかがっているためで、見ていて非常に残念で危険と言わざるを得ない。
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李真淑委員長弾劾案は誰が見ても政略的な狙いがあった。共に民主党は李真淑委員長就任前から弾劾を明言していた。こんな弾劾があり得るだろうか。実際に共に民主党は予告通り李真淑委員長について就任から1日で弾劾案を提出し、翌日に可決した。李真淑委員長が就任直後「放送通信委員会2人体制」で公営放送理事選任案を議決した点を問題視したものだったが、これは単なる口実に過ぎない。放送通信委員推薦を拒否し2人体制としたのは共に民主党だ。ところがその状態で問題を起こしたとして弾劾するとは話にならない。例え違法の余地があったとしても、弾劾理由とされた「重大な憲法・法律違反」とは言いがたい。
共に民主党はほぼ2カ月にわたり国会の憲法裁判官選出も先送りした。自分たちが次々と弾劾訴追した政府官僚に対し、憲法裁判所に弾劾審理をさせないという計算もあった。それが戒厳事態で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領を弾劾する必要が生じたため、急きょ憲法裁判官を推薦した。全てが政略であり、憲法裁判所に対する壟断(ろうだん、利益を独占すること)だ。だとすれば憲法裁判所は李真淑委員長弾劾案のような露骨な政略弾劾案は直ちに、あるいは短期間で棄却すべきだった。ところが憲法裁判所は宣告を遅らせている。これは自分たちから共に民主党と李在明(イ・ジェミョン)代表に籠絡される道を進んでいるのだ。
これとは対照的に憲法裁判所は16日に尹大統領が逮捕された事情を考慮し、弾劾審判の2回目の弁論先送りを求めた尹大統領弁護団の要請は受け入れず、弁論をそのまま行った。不確実性を解消するには尹大統領弾劾審判は迅速に行う必要は確かにあるだろう。しかしその公平性にはあまりに問題がある。共に民主党が政略でごり押しした9件の政府高官弾劾案は憲法裁判所で審理が進んでいない。共に民主党が政権を握った後に結論を出すつもりか。こんな裁判を誰が公正と考えるだろうか。