韓国は今、銃を持たない内戦状態だ【朝鮮日報コラム】

一方が他方の息の根を止めないと終わらない
心理的殺戮戦が各地で起こっている
内戦をほうふつとさせるこの混乱がどのような結末を迎えるか
ただ恐怖を感じるばかり

 憲政の最後のとりでとなる憲法裁判所も批判にさらされている。李在明(イ・ジェミョン)代表の裁判が遅れているのとは対照的に、憲法裁判所は尹大統領弾劾案には「迅速」「公正」を語り、「週2回審理を行う」としてスピード感重視を宣言した。「弾劾訴追の理由から内乱罪を外す」という共に民主党の要求まで憲法裁判所が受け入れた場合、問題はさらに拡大するだろう。法治は国を支える大きな柱だが、これも実は今揺らいでいるのだ。法律の解釈と執行が陣営で異なり、憲政制度の信頼性まで疑問視されている。

 今の内戦的状況は尹大統領が引き起こし、李在明代表が油を注いだ。戒厳の宣布と捜査拒否によって爆弾を投げたのが尹大統領であり、大統領選を急ぎたい思いから「内乱ごり押し」に突き進み、不確実性を増幅させたのが李在明代表だ。尹大統領を巡る問題の解決策は実は単純だ。憲法裁判所が公正な審理を約束し、警察が内乱の捜査権を引き継いで法律に沿って執行すれば、大統領もこれを拒否する大義名分がない。

 今最も深刻なのは「無政府状態も辞さない」という共に民主党の暴走だろう。権限代行就任と同時に首相を弾劾し、ありとあらゆる人物に「内乱に加担」というレッテルを貼り混乱を拡大再生産している。「長官5人を弾劾し、国務会議(閣議)をまひさせてやる」だとか「(大統領逮捕に向け)棺を持って出ていく血気を持て」などと口にしながら流血をあおる発言まで飛び出し、さらには崔相穆(チェ・サンモク)権限代行まで内乱に同調したとして告発した。李在明大統領就任プランを実行するためなら経済がまひしようが、危機的状況になろうが全く関係ないというその無謀さには鳥肌が立つ。

 まさに時を同じくして韓国で封切られた「シビル・ウォー アメリカ最後の日」は米国で内戦が起こるという設定の現実告発映画だ。2021年の国会議事堂での暴動で見るように、二つの陣営に分裂した米国もいつ爆発してもおかしくない状況にある。しかし米国には強固な自己防衛システムが存在する。国の中心をつかむエリートグループ、いわゆる「元老たち」に加え、危機的状況では政派を超越する政治家と司法が存在する。このシステムの力で極端な分裂を阻止し、衝突を回避してきたのが米国民主主義の250年の歴史だ。

 しかし韓国に「元老」は存在せず、政治は政派性を帯びるばかりで、司法への信頼も弱い。そのため今の内戦のような混乱が今後いかなる結末を迎えるか。考えただけで一層恐ろしくなる。

朴正薫(パク・チョンフン)論説室長

【写真】現職の身柄拘束は史上初 高位公職者犯罪捜査処に向かう尹大統領を乗せた車両

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  • ▲高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の捜査官らが漢南洞の大統領公邸検問所から敷地内に入り尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の逮捕状を執行しようとしたところ、警護処の第55警備団兵力が捜査官らを取り囲んで制止した。1月3日撮影。/ニュース1
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