今回の事故でブラックボックスが作動しなかったのは、電気動力問題が原因である可能性が高い。航空機の電源供給において核心的な役割をするエンジンが2基とも機能不全状態に陥って電気系統に問題が発生し、ブラックボックスに情報を送る機能も止まったということだ。慶雲大学航空運航学科のチョン・ユンシク教授は「事故直前まできちんと機能していたブラックボックスが突然作動しなくなった」「電気系統の問題でブラックボックスのデータ受信がきちんと行われず、記録できなかったものとみられる」と語った。航空機にはエンジンとは別に補助動力装置(APU)があるが、別途に稼動させなければならないうえ、一部の装置電源とだけつながっており、ブラックボックスに対する情報送信まではできない。
事実、航空機が自らの位置や速度などを外部に送る電波信号である放送型自動従属監視(ADS-B)信号も午前8時58分を最後に送出を停止した。これは、ブラックボックスが動作しなくなった時間とほぼ同じだ。この信号も電源供給に問題が生じると作動しなくなる。
また一部には、ブラックボックスの電源供給そのものに問題が生じた可能性を指摘する声もある。ブラックボックスに電気が供給されず、同装置が作動しなかったということだ。
ブラックボックスは航空機の速度・高度・エンジン状態など飛行データを記録するフライトデータレコーダー(FDR)と操縦室内の会話など音響情報を記録するコックピットボイスレコーダー(CVR)に分かれるが、2018年からはCVRに補助バッテリーの役割をする非常装置を付けることになっている。しかし、2009年に製造されたチェジュ航空機の事故機(機種B737-800)のブラックボックスには、こうした役割をする装置がなかったとのことだ。
事故原因を解明する重要データであるブラックボックスの記録がないため、事故原因調査や今後の責任の所在を巡る混乱は避けられないものとみられる。今回の事故の原因を正確に解明するには、「バードストライク後、なぜゴーアラウンドをしたのか」「1回目の着陸を試みた時とは反対の方向から着陸し直したのはなぜか」「ランディングギア(降着装置)をなぜ手動で下ろさなかったのか」などを明らかにしなければならない。ブラックボックスのデータがなければ、バードストライク後に発生した状況は結局、推定するしかない、というのが専門家らの大方の見解だ。
それ以上に大きな問題は、今後起こるであろう責任の所在を巡る攻防だ。事故に遭った航空機を製造したボーイングやエンジン・メーカーのCFMIの責任を問うには、ブラックボックスに基づく事故原因の解明が必要だ。しかし、客観的な証拠物がないため、ボーイングやCFMI側は過失を認めず、チェジュ航空などに責任を転嫁しようとするだろうという見方もある。航空大学のファン・ホウォン教授は「チェジュ航空などが今後、ボーイングなどの責任を問うには、ブラックボックスなどに基づく原因解明が重要だが、ブラックボックスの記録がなければ法的対応は難しいだろう」と語った。
キム・アサ記者