記者は昨年12月、ソウル市中区のロッテハイマートソウル駅店を訪れた。店内の奥にあるテレビコーナーにはサムスン電子、LG電子の大型テレビと中国TCL製のテレビが並んで展示されていた。今年初めまでTCL製品は全て低価格の小型テレビコーナーに置かれているだけだった。昨年4月からはそれまでサムスンとLGが独占していたプレミアムテレビ売り場へと「昇格」したのだ。同店で最も大きなサイズのテレビもTCLの98インチ製品だった。ファン・イルホン店長は「20代、30代が特にTCLなど海外製品を多く買い求め、200万~300万ウォン台の高価格でも月6台は売れる。技術力が国内家電ブランドに劣らないのに価格は少し割安だからだ」と話した。
サムスン・LGにとって庭のような存在である韓国家電市場が中国の家電ブランドに侵食されている。約10年前、中国ブランドは韓国の家電市場で「安いから買う製品」だった。3~4年前には「チャイソン(チャイナとダイソンの造語)」と呼ばれた小米(シャオミ)の扇風機が大きな人気を集めた。その後、品質レベルが韓国製品に近づき、最近はむしろ韓国製品より割高の中国ブランドの製品が売れている。ロッテハイマートのロボット掃除機コーナーでは、中国の北京石頭世紀科技(ロボロック)の売り場が別途設けられていたが、価格は177万ウォン(約18万7000円)で、サムスン・LGに比べ20万ウォンほど高かった。コストパフォーマンスで家電大国の日本を抜き、世界市場でプレミアムイメージを確立した韓国企業の成功術を中国企業がそのまま踏襲しているのだ。家電メーカー幹部は「ある時点からプレミアム市場でも中国製品に対する消費者の抵抗感が少しずつ消えてきている。中国ブランドに対するイメージが一度変わり始めれば、韓国家電市場も一瞬にして中国の手に渡りかねない」と話した。