―中国が早く自立できた理由は何か。
「中国は2000年前後に電子商取引(EC)やインターネット検索などで急速に成長した。ところが、そのような情報は外国製の半導体に保存された。2010年代に中国が最も多く輸入したのは石油ではなく半導体だった。いつでも(情報が)米国に流出する可能性があるからだ。中国が半導体自立のペースを上げるきっかけになった。中国市場を諦められなかったIBM、AMDなどの半導体メーカーは、中国メーカーとコンソーシアムを立ち上げるなどして、中国の技術自立に協力した。華為(ファーウェイ)は売上の23%以上を研究開発に投資するが、これは米国ビッグテックのほぼ2倍の水準だ」
―韓国が競争力を回復する方法はあるか。
「技術的に差別化できない企業は激しい競争と収益低下が避けられない。そうした企業は過去よりはるかに早くシェアを失うだろう。半導体は変化が速いだけに差別化の失敗に伴うリスクもそれに比例して早く、強く表れる。技術革新に常に集中することがリスクを避ける唯一の方法だ。韓国はAIのように次の時代の革新に乗り遅れないための重要部品を生産できなければならない。SKハイニックスがそんな可能性を示したが、他社も事業モデルを見直す必要があるだろう。技術の変化に後れを取りかねないという恐怖を常に持つべきだ。それが歴史の教訓だ」
―米国の半導体サプライチェーン再編は成功するか。
「米国の対中制裁がなければ、中国による技術自立のペースは我々が今目にしているよりもはるかに速かっただろうし、米韓などにさらに大きな打撃を与えただろう。そう考れば、ある程度意図した目標を達成できたと言える。米国は再び世界の先端半導体生産拠点としての役割を果たせるとみている。サムスン電子やTSMCが米国に最先端の2ナノメートル製造プロセスの生産拠点を設けることは難しいだろうが、その前段階である3ナノメートルの技術は採用するだろう。数多くのAI半導体が3ナノメートルの製造プロセスで生産されている」
―最先端チップがTSMCに集中することも、韓国にとっては危機だが。
「最先端の半導体生産の90%が台湾にある構造は確かに問題がある。台湾は中国の侵略という安全保障問題が関係している。TSMCが台湾の安全を保障するという見方もあるが、中国の習近平主席は政治的目標を達成するためならば、非理性的で破壊的な政策を推進できる人物だ。製造業の基盤をより多様化しようという米国の目標を考えると、サムスン電子は潜在的に非常に重要なプレーヤーとして残るに違いない」
シリコンバレー=オ・ロラ特派員