非常戒厳令が宣布された当日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は李鎮遇(イ・ジンウ)首都防衛司令官=身柄拘束済み=ら現場の指揮官たちに電話で「銃を撃ってでもドアを壊して入っていき(国会議員を)引っ張り出せ」と指示したという。「扉を斧で破壊してでも中に入り全員を引っ張り出せ」との指示もあったようだ。検察が金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防相を逮捕・起訴する際の訴状に記載された内容だ。大統領が銃器の使用に言及したことも衝撃的であり、事実であれば明白な違憲・違法だ。憲法と戒厳法によると、非常戒厳令により司法部と行政府の権限を制限することはできるが、立法府の活動を停止させることはできない。検察は一連の状況や陳述などにより尹大統領の行為を「国憲紊乱(びんらん)目的が認められる」として内乱罪に相当すると判断した。
尹大統領は趙志浩(チョ・ジホ)警察庁長にも複数回電話で「国会に入ろうとする国会議員は全員逮捕せよ。全て布告令違反だ。逮捕しろ」と指示したという。検察の捜査によると、金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防相も呂寅兄(ヨ・インヒョン)前国軍防諜司令官に「与野党代表など主要な人物10人以上を逮捕・拘禁せよ」と指示したという。
これまで尹大統領は「非常戒厳令は立法暴走、弾劾暴走を続ける野党に対する警告の意味を込めた措置だった」と説明したが、これら一連の陳述や徴候は尹大統領のこの説明と完全に矛盾する。尹大統領の弁護人団は「尹大統領は逮捕の『た』の字も口にしていない」と主張している。しかし検察は捜査により「逮捕班」まで動員された事実をすでに解明した。尹大統領は今月12日の対国民談話で「わずか2時間の内乱などあり得るのか」と主張した。しかし尹大統領は国会で戒厳令解除要求案が可決した直後、李鎮遇司令官に「解除されても私が2回、3回戒厳令を宣布すればいいから、継続して進めろ」と指示したという。
一連の陳述や徴候が事実かどうかは今後の捜査と裁判で解明されるだろう。もし事実であれば、あまりに衝撃的で深刻な内容だ。戒厳令事態の最高責任者である尹大統領は少なくともこの問題に対する立場をまずは国民にはっきりと説明すべきだ。尹大統領は戒厳令宣布について「法的、政治的責任を回避しない」「私を弾劾しても、捜査しても堂々と立ち向かう」と述べた。しかし尹大統領が弾劾審判や捜査で示した対応はこれらの言葉とはあまりにかけ離れており、高位公職者犯罪捜査処からの出頭要求には応じる気配が全くない。尹大統領は自らの決定に責任を持つ姿を堂々と示すべきだ。