尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領弾劾案可決により、これまで構築されてきた韓米日安保協力体制が揺らぎ、中国の韓国国内における影響力が強まることを懸念する声が、米国の官民で相次いで上がっている。尹大統領の非常戒厳宣布は非難されるべき間違った選択だが、米国・日本と緊密に協力してきた外交・安保路線は維持すべきだということだ。
【グラフィック】韓国メディアになりすまして親中反米フェイクニュースを生産する中国企業の手口
米政治専門メディアのポリティコは18日、「尹大統領弾劾はインド太平洋地域で韓米日協力を通じて中国の覇権主義をけん制しようとしたジョー・バイデン大統領の努力に多くの影響を与えるだろう」「(最大野党)共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が執権すれば、バイデン大統領がソウルと東京を仲裁して成し遂げた韓米日3カ国の関係が危険にさらされることもあり得る」と報じた。
ポリティコは李在明代表を「圧倒的な人気を得ている次期大統領選候補」と紹介した上で「(李在明代表が政権を握れば)日本に対する根強い反感を利用し、日本との外交で橋渡しになった尹大統領の役割を覆し、韓米日協力に対する韓国の約束も覆す可能性がある」としている。
また、李在明代表について「中国に対して(現在の尹政権とは)非常に異なる見解を持っている」とも述べた。そして、「(米中のはざまで)韓国がどちらかの味方になるよう圧力を加えられないことを願う」=2021年=、「公然とうまくやっている中国に無駄で過度な言いがかりをつけて関係を悪化させる必要はない」「台湾海峡で彼らが戦おうがどうしようが、われわれは『既存の秩序を尊重する』と優雅に一言、言ってしまえばいい」=以上、今年3月=など、両岸(中国と台湾)情勢に関する李在明代表の過去の発言を紹介した。李在明代表のこうした認識は、韓米日をはじめとする自由民主陣営国家がここ数年間、「台湾海峡の平和と安定」「力による現状変更反対」を唱え、歩調を合わせてきたのとはやや温度差がある。
ポリティコは「(李在明代表が大統領になれば)尹大統領がワシントンでしたような親近感を示すアプローチ方式は踏襲せず、韓米同盟を優先視する傾向も弱まるだろう」=米国平和研究所(USIP)研究員=、「李在明政権が発足したら、日本が植民地支配期間に取った行動に謝罪することを要求し、『謝罪するまで、まともな対話はできない』と言う可能性もある」=ジョージ・ワシントン大学ロバート・サター教授=ら専門家たちの懸念の声も紹介した。
米政界でも、今回の事態により韓米日安保協力の構図が揺らぎ、その隙間に中国が入り込むことを懸念する声が出ている。第2次トランプ政権で国務長官に指名されたマルコ・ルビオ上院議員は米政府系放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)のインタビューで「中国は韓国の政治的不安定を利用しようとするだろう。これは韓国の国益に合致しない」と言った。上院外交委員長を務めるベン・カーディン上院議員もVOAに「中国はできるだけ多くの『親中同調者(pro-Chinese sympathizers)』を望んでいるため、機会があれば動くだろう」と述べ、韓国の状況に対し中国が介入する可能性に警戒している。
ワシントン=金隠仲(キム・ウンジュン)特派員