【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対する弾劾訴追案が国会本会議で可決され、尹氏は大統領としての権限が行使できなくなった。国会が発送する弾劾訴追議決書が大統領室に届けば、大統領の職務と権限は停止される。
大統領は国家元首であり行政府の首班として▼国軍統帥権▼条約締結批准権▼赦免・減刑・復権権▼法律案拒否権(再議要求権)▼国民投票否決権▼憲法改正案発議・公布権▼法律改正案公布権▼予算案提出権▼外交使節受け入れ▼行政立法権▼公務員任免権▼憲法機関の任命権――などの権限を持つ。
弾劾審判期間中、尹大統領はこれら権限を行使できず、閣議の招集や公務員任命、官庁からの報告聴取・指示などの国政行為を中断しなければならない。
尹大統領は夫人の金建希(キム・ゴンヒ)氏を巡る疑惑を政府から独立した特別検察官に捜査させるための特別法案に対する拒否権も行使できなくなる。尹大統領は就任後、同法案に3回の拒否権を発動するなど、計25件の法案を国会に差し戻した。今後は大統領権限代行である韓悳洙(ハン・ドクス)首相が拒否権行使の可否を決める。
大統領の職務を補佐する大統領秘書室と国家安保室も今後は韓首相の指揮を受けることになる。
ただ、弾劾案可決により大統領の身分まで剥奪されるわけではない。「尹錫悦大統領」との呼称はそのまま使用され、警護・儀典など大統領に対する礼遇にも変動はない。官用車や専用機も利用できる。
大統領公邸での生活も維持される。2004年に弾劾案が可決され、職務停止になった盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の場合、公邸で生活し公式活動は行わず、16年の朴槿恵(パク・クネ)元大統領も弾劾案可決後、公邸からの外出を控えた。
尹大統領の場合、職務停止期間中に弾劾の審判を行う憲法裁判所に出席する可能性がある。尹大統領は今月12日に発表した談話で「最後まで戦う」と公言しており、直接弁論する可能性がある。
大統領の給料も従来通り支給される。公務員報酬規定上、尹大統領の今年の年俸は2億5493万ウォン(約2700万円)だ。ただ、一部の業務推進費の給与は受け取れない。
憲法裁判所が尹大統領の弾劾案が妥当と判断すれば年金支給や秘書官支援などを受けられなくなる。