■下野ではなく弾劾を選んだ四つの理由
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が保守系与党「国民の力」から提案された来年2-3月の早期退陣ではなく、弾劾訴追されてでも法的対応を取る側を選んだ背景を巡って、韓国政界では幾つかの解釈が出ている。大統領府周辺の人物は、表面的な理由として「大統領は、非常戒厳を宣布するほかなかった切迫した状況を憲法裁判所の弾劾審判の過程で疎明したい、という意志が強いようだ」と説明した。これと併せて与党側からは「尹大統領が、弾劾審判を受ける方が下野よりも政治的に有利という判断をしたらしい」という声も上がっている。
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(1)「内乱ではない」 法的に争うことを予告
尹大統領は最近、弁護人を物色しつつ、憲裁での弾劾審判など法律的な争いの準備をしているといわれている。大統領府の事情に詳しい与党側の関係者は「内乱の容疑くらいは脱したい、と大統領は思っているようだ」と語った。非常戒厳事態の後に大統領と会ったというある議員は「大統領は『民主党の高位官僚無差別弾劾や予算案における一方的削減などを憲政秩序に対する暴挙と思った。政府転覆の危機感があったので、合憲的な範囲内で非常戒厳を宣布した』と語っていた」と伝えた。尹大統領は、憲裁で民主党の行いについて具体的に説明したいと考えているといわれる。そうすることで、「戒厳軍を国会などに入らせたが、内乱目的はなかった」という点を掲げて法廷で争う気だと伝えられている。
(2)「来年上半期に李在明代表の控訴審判決…時間稼ぎ」
韓国政界では、尹大統領が最後まで任期を務め難い場合、早期の大統領選挙の時期がいつになるかという観点からも「来年2-3月の下野」よりは弾劾の方が有利だと判断したらしい、という分析が出ている。
韓国国会が弾劾訴追案を通過させたら、憲裁は事件の受理から180日以内に決定を宣告しなければならない。憲裁がもし弾劾を認めたら、決定宣告の翌日から60日以内に大統領選挙を行わなければならない。国会で弾劾案が可決されて憲裁で最長の期間の審理が行われたと仮定すると、次期大統領選挙は来年7-8月に行われることになるかもしれないのだ。国民の力から提案された「早期退陣ロードマップ(来年4-5月に大統領選挙)」と比べると、弾劾手続きを経る方が2カ月以上も時間を稼げる、とみているのだ。
状況は異なるが、民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表も時間に追われているのは同じ。李代表は先月、選挙法違反事件の一審で懲役1年・執行猶予2年を言い渡された。控訴審・上告審でこの判決の通り確定したら、10年間は被選挙権が剥奪され、大統領選挙に出馬できない。