韓国最大野党・共に民主党が、空席となっている、国会から選出される憲法裁判官3人を任命するために推薦した候補者の一人、ソウル西部地裁の馬恩赫(マ・ウンヒョク)部長判事(61)=司法研修院第29期=が過去の判決で「政治的偏向」問題を起こしていたことが10日、分かった。
馬恩赫判事は、ソウル南部地裁にいた2009年11月、「国会不法占拠事件」で起訴された民主労働党の党役員12人に対する一審判決で、全員公訴棄却との判断を下した。12人は当時、ハンナラ党の韓米自由貿易協定(FTA)批准同意案職権上程の動きなどに反発し、08年12月30日から09年1月5日まで国会を不法占拠した疑い(暴力行為処罰法違反)で起訴されていた。だが、馬恩赫判事は判決文で「民主党の党役員らも国会議長の退去命令に応じなかったのに、民主労働党の党役員だけを起訴したのは恣意(しい)的な差別だ」「検事が公訴権を乱用したものだ」と述べた。
検察は当時、「民主党の党役員らは同年1月5日未明に自主的に解散し、唯一現場で摘発された民主党補佐陣が捜査を受けたものの、容疑が明らかにならず、『嫌疑なし』として処理した」と反論した。国会法制司法委員会も判決直後の会議で「『他の泥棒は逃しておきながら、なぜこの泥棒だけを法廷に連れてきたのか』と言って帰らせたのも同然だ」「判事自身の信念が過度に偏っている」と批判した。
本紙の取材を総合すると、控訴審は2010年7月、大法院(最高裁判所に相当)は12年7月に馬恩赫判事の公訴棄却判決を棄却して裁判のやり直しをするよう、同件をソウル南部地裁に差し戻した。その後再開された裁判で、同地裁は民主労働党の党役員7人に罰金20万ウォン(現在のレートで約2万1000円)、残りの5人に宣告猶予判決を下し、控訴棄却で確定した。
馬恩赫判事は2009年、親交のあった魯会燦(ノ・フェチャン)進歩新党代表(当時)後援会の集まりに出席し、後援金を出していたことが明らかになり、「政治的中立に違反する」と批判が起きたことがあった。この事案では裁判所長から口頭で警告を受けた。馬恩赫判事は進歩系(革新系)判事の集まりである「ウリ法研究会」所属だったといわれている。
共に民主党は憲法裁判官候補者に馬恩赫判事のほか、鄭桂先(チョン・ゲソン)ソウル西部地方裁判所長(55)=第27期=を、国民の力は趙漢暢(チョ・ハンチャン)弁護士(59)=同18期=を推薦した。共に民主党は10日、憲法裁判官の選出に関する人事聴聞特別委員会を構成するなど、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する弾劾審判を念頭に置いて迅速に手続きを進めているものと受け止められている。
李世永(イ・セヨン)記者