【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は3日夜、国会で多数を握る野党が来年度の予算案の削除を求め、閣僚や検事の弾劾訴追案を提出して国政をまひさせたとして、非常戒厳令を宣布した。これを受け、国会は4日未明に本会議を開き、非常戒厳の解除要求決議案を可決した。与党の一部議員も採決で賛成票を投じた。
尹大統領は非常戒厳令宣布に関して緊急談話を発表し、「(北朝鮮に追従する)従北勢力を撲滅し、自由憲政秩序を守るため非常戒厳令を宣布する」と述べた。また、「政権発足後22件の政府官僚の弾劾訴追を提出した」として、「これは世界のどの国でも例がなく、韓国建国以降もなかった」と指摘。「判事を脅迫し、多数の検事を弾劾するなど司法業務をまひさせ、行政安全部長官の弾劾、監査院長の弾劾、国防部長官の弾劾の推進などで行政もまひさせている」と批判した。
そのうえで、「国家本質の機能や麻薬犯罪取り締まり、治安維持のための主な予算を全額削減し、国家本質の機能を傷つけ、韓国を麻薬天国、治安パニックの状態にした」と非難し、「憲法と法によって立てられた正当な国家機関を揺さぶることで、内乱を画策する明白な反国家行為」と強調。「今の国会は犯罪者集団の巣窟になり、立法独裁で国の司法行政システムをまひさせ、自由民主主義体制の転覆を図っている」と断じた。
韓国で非常戒厳が宣布されるのは1979年以来、45年ぶりとなる。
非常戒厳令の宣布により、戒厳司令官に朴安洙(パク・アンス)陸軍参謀総長が任命され、政治活動の禁止などを盛り込んだ布告令が発表された。
戒厳軍が国会に入ろうとし、抵抗する国会議員の補佐官らとの衝突も起きた。
国会(定数300)は4日午前0時50分ごろに本会議を開き、非常戒厳の解除要求決議案を上程。同1時ごろに在籍議員190人、賛成190人で可決した。与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表に近い議員18人と野党議員172人が賛成した。禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長は「議決により大統領は直ちに非常戒厳を解除しなければならない。もう非常戒厳は無効」と述べた。
国会は午前2時ごろ、大統領と国防部長官に戒厳解除要求通知を送った。
韓国の憲法第77条は「国会が在籍議員過半数の賛成で戒厳の解除を要求した際、大統領はこれを解除しなければならない」と定めている。
また戒厳法第11条は「国会が戒厳の解除を要求した場合は滞りなく戒厳を解除し、公告しなければならない」とし、「大統領が戒厳を解除する場合は閣議の審議を経なければならない」と規定している。